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新テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」ってそんなにすごいの? 1万円でも高くないと感じた「没入体験」に迫る(5/6 ページ)

「没入体験」をウリに、ヴィーナスフォート跡地に誕生した「イマーシブ・フォート東京」。なぜ2年ほどという非常に短期でオープンできたのか。その他、同施設の「スゴい」ポイントを、経営コンサルタントが分析していく。

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複数の場所で同時にアトラクションを展開

 イマーシブ・フォート東京の売りは、アトラクションを同じ施設内に複数用意したことにもあります。

 もともとイマーシブシアターは、2012年ごろからロンドンやニューヨークなどで話題を呼び、人気のコンテンツとなっていました。筆者も14年にニューヨークでイマーシブシアターを体験しました。会場は、1939年に作られ、79年にクローズした古いホテルです。ロウワー・マンハッタンのチェルシー地区にあり、夜はひっそりとしている倉庫街のようなエリアで、歩くのをためらう雰囲気がありました。


マッキトリック・ホテルでスリープ・ノー・モアに並ぶ人(撮影:筆者)

 数十年にわたって廃墟と化していた同ホテルに目をつけたのが、アミューズメント・シアターをプロデュースする英国の「パンチドランク」というシアター・カンパニーでした。パンチドランクは、舞台となる館の中で、役者たちが数カ所に分かれて一つのサスペンスストーリーにおける異なるシーンを演じ、観客は白い仮面を着けて、 館内を自由に移動しながらそれらのシーンを鑑賞する――という企画を考えたのです。観客はストーリー全体を徐々に把握していきながら、サスペンスの謎を解くというとてもユニークなコンセプトでした。まさにイマーシブ・フォート東京のザ・シャーロックのような内容です。

 そこで上演した、シェークスピアの『マクベス』をモチーフにしたパフォーマンス「Sleep No More/スリープ・ノー・モア」では、観客は入場時に全ての荷物を預け、トランプカードと仮面をもらいます。そして「決して仮面を取ってはならないこと」「口を開くのは許されないこと」と約束をしてからショーが始まるという、初めてかつ斬新な体験でした。


最後まで仮面をとってはいけないことがルール(撮影:筆者)

 筆者は数人のグループで行ったのですが、全員バラバラのフロアに振り分けられて、ショーが終わるまで一緒になることはありませんでした。それがまた特別な体験で、完全にこの世界に没入したことを覚えています。

 終わった後に参加した人の口から出てくる感想は、筆者の感想と全く違っていました。見ているシーンが違うので、筆者が見ていないことを他の人が見ているのです。それがまたショー後の盛り上がりにもつながっているように感じました。80ドル(当時のレートで約9000円)という価格は少し高いと感じましたが、見終わった後はとても満足し「これなら安い」と感じたのをよく覚えています。

 当時、会場ではスリープノーモアの1作品のみを毎日上演していました。筆者は楽しんだと同時に「このような作品が他にもいくつかあれば、もっと集客できるだろう」と思いました。1つの作品だけではどうしても客は飽きるからです。しかし、役者を大勢そろえる必要もありますし、広いスペースも必要です。複数のコンテンツを提供するのは難しいだろう、とも思っていました。

 イマーシブ・フォート東京では、同時に複数作品を上演できる広い施設を確保し、もともとあった中世ヨーロッパ風の質の高い内装デザインを活用することで、「本場」を超えるようなイマーシブ体験を可能にしました。


「ザ・シャーロック」の一場面(撮影:ムガマエ)SHERLOCK HOLMES, DR. WATSON, and are trademarks of Conan Doyle Estate Ltd.(R)

「ザ・シャーロック」の一場面

「ザ・シャーロック」の一場面

「ザ・シャーロック」の一場面

 イマーシブ・フォート東京には現在アトラクションが11個あり「1dayイマーシブ・パス・カジュアル」(12歳以上6800円、12歳未満3000円)では7つを体験できます。なお、先ほど紹介したザ・シャーロックなど一部アトラクションは別途体験パスが必要です。とはいえ、7つのアトラクションを楽しみ、ザ・シャーロックのような凝ったアトラクションを体験してもチケット代は1万円ほどですから、ニューヨークなどの本場と比較してもお得な価格設定といえるのではないでしょうか。

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