JR東海が「推し旅」で進めるIPと沿線のマッチングビジネス カプコンと組む狙い:ラグーナテンボスとコラボ(2/2 ページ)
JR東海、カプコン、ラグーナテンボスという“異色”のコラボはどのように実現したのか。JR東海営業本部で「推し旅」を進める、福井一貴副長に狙いを聞いた。
新幹線に乗るインセンティブ作り
――「推し旅」が本格的に始まって2年ぐらいになりますが、手応えとしてはいかがでしょうか。
手応えというか実感はあります。実感というのは、推し活とかそういう「推し」みたいなものをキーワードに、ファンの方々に当社の沿線に足を運ぶイベントを作る。いわゆる着地型のイベントを作る。例えば、このラグーナテンボスもそうですが、一つスポットを作って新幹線で来ていただくという、そういった「推し旅」の企画をやっていける自信は持っています。
一方で、「推し旅」の目的はお客さまに新幹線に乗っていただくところがキーワードになってくるので、「新幹線に乗る」ことのハードルの高さをどう解決するかという問題がまだあります。
例えば、イベントで1万人が集まっても、新幹線で来てくれた人が実は500人しかいなかったということはよくあります。推し活をされる方々は若い方々が多く、推し以外の部分にはお金をかけたくない方も少なくありませんので、高単価な新幹線に乗ることはすごくハードルが高い実情があります。
――新幹線に乗るインセンティブは、どうすれば生み出せるのでしょうか。
一つ今、実はカプコンとのコラボでも進めているのですが、新幹線の移動自体に価値を作る取り組みを始めました。「カプ旅クイズ100」というもので、これは走行中の東海道新幹線車内だけWeb上で遊べるゲームになっています。
――新幹線での移動に、まさに付加価値をつけたわけですね。
ようやく新幹線の移動を楽しめるシステムが整ってきましたので、移動中にしか楽しめないコンテンツを拡充していきたいですね。「カプ旅クイズ100」では、クイズに正解していくとポイントが貯まるのですが、そのポイントがたまると抽選ができて、景品がもらえるものになっています。「ラグーナテンボスに来てください」というだけだと行くのをためらっていた人たちが、新幹線の移動クイズとセットになることで「じゃあ行ってみようか」と思っていただけるのではないかと期待しています。
――今まではこうしたコラボイベントでは、JR東海はスポンサー的な関わり方のものが多かったように思いますが、一事業者として主体的に生み出している感じがします。
われわれもこれは事業だと思っています。一事業として、地域創生といった文脈にもしっかりとつなげていくことで、ラグーナテンボスにもメリットを感じてもらい、自治体側にもメリットを生み出せるマッチング会社としても、いろいろなことを打ち出していきたいですね。
――不動産とはまた違う特殊な商売ですよね。売上高の面では効果は出ているのでしょうか。
われわれのKPIはどれだけこのイベントに来ていただいたか、そしてそれが新幹線の需要にどれだけ貢献したかになります。以前は100人のイベントだったものが千単位になり、万単位になるところまでできていると思っています。
――「推し旅」の参加者が新幹線に乗ったかどうかはどのように効果測定しているのでしょうか。
実はお客さまにイベントに参加いただく時に、いろいろなアンケートを取っています。その中で、何の目的で参加したのか、新幹線に乗ったかという事項は全て設問に入れています。その数だけでも千や万に達しているので、手応えを感じています。
――「リアルバトルハブ in ラグナシア」では、カプコンのクリエイターの方も集まって、壁画も描きました。
巨大なゲームセンターがラグーナテンボスに誕生したと私は思っているのですが、私のような世代がかつてゲームセンターで体験していた、知らない人同士の対戦を見る楽しさみたいなものが共有できると思うんですよね。壁のアートにしても、われわれがお願いしたものではなく、カプコンさんのほうから提案があったものです。
カプコンさんはどうすればファンが喜ぶかを一番良く理解しています。正直に言えばJRではこんな発想はできません。まさにこれがものづくりだと実感しました。
こういった体験価値を、ゲームがそんなに得意じゃない人でも、できるだけ多くの皆さんにここに来て、まずゲームを触ってもらえれば本当にうれしいですね。コアなファンの方だけのイベントではなく、幅広い世代の方にも来てもらえればと思います。豊橋でも別のイベントを予定していますので、今後発表していきます。
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