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小林製薬の「紅麹」問題 「機能性表示食品」見直しの背景に何があるのかスピン経済の歩き方(1/7 ページ)

小林製薬によるサプリメント健康被害問題を受け、「機能性表示食品制度の見直し」を行うべきとの動きがある。業界に与えるインパクトや、今後考えられるシナリオは……。

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 「未知の物質がどうやって混入したのか究明すべき」という話が、いつの間にやら別の「犯人」を吊(つる)し上げる動きにすり替わってしまったようだ。

 小林製薬のサプリメント健康被害問題を受けて3月末から、こんな論調のマスコミ報道が増えてきている。

「小林製薬『紅麹』も分類 増える機能性表示食品、問われるモラル」(『毎日新聞』 3月27日)

「紅麹など『機能性表示食品』始まりは安倍政権の『経済成長戦略』 トクホより緩い規制、企業には便利」(『東京新聞』 3月28日)

「機能性表示食品のデータベース 約15%半年以上更新されず」(『NHKニュース』 3月30日)


小林製薬の「紅麹原料」を含むサプリメント(出典:公式サイト)

紅麹

 このタイミングでここまで分かりやすく「犯人」扱いされれば当然、行政も動く。4月2日には、消費者庁が機能性表示食品制度のあり方について検討を進める対策チームを立ち上げた。現在およそ7000ある機能性表示食品の届出をしている1700の事業者に対して、健康被害の有無などの点検結果を取りまとめ、課題などを検証してその結果を5月末をめどにまとめていくという。

 ただ、冷静に考えると、これはかなりダイナミックなミスリードだ。

 ご存じのように今、健康被害を引き起こしていると言われているのは、製品と紅麹から検出された「未知の成分」だ。これは青カビからできる毒性の高いプベルル酸という可能性も浮上して、混入経路や成分特定が進められている。

 一方、諸悪の根源とされている「機能性表示食品制度」は読んで字のごとくで、パッケージや広告における「表示」のルールにすぎず、そもそも製造工程の安全性をチェックするものではない。


「紅麹」問題で波紋が広がっている小林製薬。これまで数々のヒット商品を生み出してきた

 「紅麹」という成分そのものが人体に危険だという話ならば、「怪しい成分を商品名にして効果をうたいやがって」とボロカスにたたかれるのは理解できる。が、今回はそういう話ではない。

 にもかかわらず、「犯人」扱いされてしまっている。これは、本制度が安倍政権時につくられたことと無関係ではない。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないが、安倍元首相を糾弾する人たちは、その政策もすべて「悪」としてたたかないと気が済まないものなのだ。

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