スバル、山崎製パン、キリン……相次ぐ“事故” 問題の根っこに何がある?:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
2月にはスバルや山崎製パン、4月にはキリンビールの工場でも、事故死が発生している。なぜ今、「工場死」が相次いでいるのか。
工場で労働災害が増えている3つの要因
この深刻さがよく分かるのが、厚生労働省静岡労働局が注意喚起のために作成した「製造業のはさまれ・巻き込まれ災害のポイント」だ。
「製造業における労働災害は、全産業の3割程度を占め産業別では最多となっており、特に機械等へのはさまれ・巻き込まれによるものが多数発生しています」
この資料では、2022年に発生した「はさまれ・巻き込まれ」の労災事故をグラフにしている。最も多いのは「食料品」(92件)で、次が「金属製品」(55件)。冒頭で触れたスバル、山崎製パン、カネソウ、UACJの事故は一見するとバラバラで関連性がないと思うだろうが、実は本質的なところでは「はさまれ・巻き込まれ災害」という同じ問題が起きていたのだ。
では、このような「はさまれ・巻き込まれ災害」も含めて、なぜ日本の工場で「休業4日以上の死傷者数」が増えているのか。いろいろな意見があるだろうが、筆者は主に以下3つの要因があると思っている。
(1)「人手不足」による単独作業の増加
(2)労働者の高齢化による運動・認知機能低下
(3)低賃金で使い捨てにされる非正規雇用の増加
まず(1)に関しては、先ほども申し上げたように日本の工場労働者は大激震しており、製造業は深刻な人手不足に陥っている。しかし、その工場を運営している企業側の業績は右肩上がりだ。なぜこんなことが可能になっているのかというと、大型機械を導入して作業の効率化が進んでいるからだ。
これは一見すると、何やら素晴らしい進歩のように感じる。ただ、どんなに素晴らしい工場機械をそろえてもメンテナンスをするのは人間だ。そこが足りなければ、「巨大な機械を1人で扱う」という状況が増えるということなので当然、「はさまれ・巻き込まれ災害」も増えていくというワケだ。
また、このように「これまでチームでやっていたことを1人でやる」機会が増えるということは、何かのアクシデントが起きた時の発見や救助が遅れるということでもある。キリンピールの工場で作業中に行方不明になり、捜索をしたらコーンスターチの中に埋もれていたというのはその典型だろう。
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