スバル、山崎製パン、キリン……相次ぐ“事故” 問題の根っこに何がある?:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
2月にはスバルや山崎製パン、4月にはキリンビールの工場でも、事故死が発生している。なぜ今、「工場死」が相次いでいるのか。
労働者の高齢化
(2)の「労働者の高齢化による運動・認知機能低下」に関しては、ベテランの作業員が陥りやすい罠(わな)だ。人は50代から急速に「判断力」や「遂行力」という認知機能が低下することが分かっている。つまり、アクシデントに直面した際、若い時ならば瞬時にできた判断が、加齢でワンテンポ遅れてしまうことがあるのだ。
それに加えて、ベテランになればなるほど体は衰える。若い時に比べて筋力も反射神経も衰えているので、以前ならば手を伸ばして届いたものが届かない。若い時には気付いた異変に気付かない。
今回、山崎製パン工場で機械に挟まれて亡くなったパート勤務女性も勤続10年のベテランながら、61歳ということで運動・認知機能の低下があった可能性も否めない。このように工場労働者が年を重ねていくほど労災リスクも急速に高まっていくことを示すデータもある。
実は労災事故の4分の1は「転倒」だ。「墜落・転落」「腰痛」を含めると、なんと労災の半分近くになる。日本は世界ナンバーワンレベルのスピードで高齢化が進行しており、工場労働者も高齢化している。それはつまり、運動機能や筋力の低下した工場労働者が多いことを示し、「転倒」「墜落・転倒」「腰痛」などの労災もこれからさらに増えていく可能性が高いということだ。
そして最後の(3)「低賃金で使い捨てにされる非正規雇用の増加」というのは、山崎製パンなどの食品製造業が抱えている構造的な問題だ。
最近また増えてきた「日本スゴい」をうたうバラエティー番組で、外国人観光客に「こんなにおいしいパンやおにぎりが安く買えるなんて日本のコンビニは世界一!」とかおだてさせているが、実はこれはコンビニが世界一なわけではない。
最低賃金スレスレの安い時給でも文句を言わずにマジメに働く「世界一従順な低賃金工場労働者」のおかげだ。そして、その多くはパートやアルバイトという非正規雇用の人々である。
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