待ち時間の解消だけではない、レジなし店舗「Amazon Go」の真の狙いとは?:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
Amazonがスーパーマーケット「Amazon Fresh」に採用するレジなし決済システム「Just Walk Out」をAIレジカート 「Dash Cart」に置き換えるとの報道が話題に。Amazonの真の狙いとは――。
レジなし決済システム「Just Walk Out」の売り上げ成果
Amazonの発表文で面白いのは、レジなし決済システムJust Walk Outの成果について公表していることです。その部分を抜粋して和訳すると以下の通りです。
この技術の真価は、小型店舗で発揮される。厳選された品ぞろえの店舗こそ、Just Walk Outの未来であると確信している。すでに1800万点以上の商品が販売され、米国、英国、オーストラリア、カナダの140カ所以上の店舗で導入が進んでいる。
Just Walk Outの勢いは今後も続くだろう。顧客はその利便性を気に入り、企業は売上増加、盗難減少、投資収益率の向上を実感しているからだ。例えば、ルーメン・フィールドでは取引件数が85%、売上が112%増加した。デラウェア・ノース社の店舗では、20〜30%多くの顧客にサービスを提供できるようになった。ロンドンにあるExCel Market Expressでは、最も混雑する日に300%多くの顧客に対応でき、年間売上が56%増加したのである。
小型の店舗に多くの来店客がやってくるような状況では、Just Walk Outの優位性は確実にあるようです。レジなし店舗導入の判断は「単位時間あたりの入店客数/売り場面積の大きさ」で考えるとよいでしょう。
つまり、Just Walk Outは、レジでの会計処理に時間がかかることが、店舗の来店客対応能力の限界要因になってしまうような立地や品ぞろえの店で、最も力を発揮する技術だということです。
例えば、繁華街や駅構内、オフィス街など人が多く、多くの来店客が短時間で買い物を済ませたいシーンがある立地の店舗です。Just Walk Outを導入することで、レジ待ちの時間を解消し、多くの来店客がスムーズに買い物できるようになります。結果として売上拡大につながるのです。乗車・搭乗時間までの短時間にレジまで済ませる必要がある電車のホームや空港の売店は相性の良い店舗でしょう。
米ニューヨーク・ラガーディア空港のターミナルにある売店WHスミスは、Amazonが外販するJust Walk Outを採用しており、クレジットカードで入店する店舗です。筆者は2022年9月に利用してみました。
Amazonアプリすら不要でクレジットカードで入店できるということで、開店7カ月後にも物珍しそうに見ている旅行者が大勢いました。
実際に買い物してみた感想としても、Amazon Goと同様の買い物体験でした。一点違ったところは、カード利用明細が届けば合計金額が分かるものの、Amazonアプリでの購入と違い、商品の明細がないため、複数商品を購入して会計が間違えていた場合、どの商品がカウントされておらず、どの商品が重複してカウントされているのか――といったことが分からないことです。
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