今さら聞けない「物流2024年問題」のウラ側 根本解決はできるのか?:働き方の「今」を知る(2/3 ページ)
さまざまなメディアで「2024年問題」が取り沙汰されている。その中でも消費者の生活に大きくかかわる物流・運送業界の現状と法改正における課題について、解説。根本解決への道を考察する。
「過労死ライン」がはびこる現状 法改正における課題は
時間外労働の年間上限時間は、一般則では特別な事情がある場合でも「年720時間」となっているが、自動車運転業務(トラック・バス・タクシー)を含む一部業種では、業務特性上「年960時間」となる。
また「複数月平均80時間」「単月100時間未満」という残業時間の制限もドライバーには適用されず、ある月に時間外労働が100時間に達したとしても、他の月の時間外労働時間を削減するなどして「年960時間を超えなければよい」とされている。
ちなみに全日本トラック協会では、ドライバーの1カ月間における合法的な拘束時間目安を「274時間」と計算している。
参考(合法的な拘束時間目安を「274時間」としている理由)
仮に1カ月を4.3週、22日勤務、1日1時間休憩とすると、
【法定労働時間】1週間40時間×4.3週=172時間
【時間外労働】960時間(法定上限)÷12カ月=80時間
【休憩時間】1日1時間×22日=22時間
従って、172+80+22=274時間となる。
一方で厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査」によると、繁忙期における1カ月の拘束時間が274時間を超える事業者は2021年度で全体の約34%を占めている。その中でも月間320時間を超える事業者は2.4%も存在しており、規制の限度内に抑えるには厳しいのが現状なのだ。
そもそも、改正後の残業上限である年間960時間を月平均に換算すれば「80時間」となり、これは既に「過労死ライン」とされているレベルである。労働者保護の観点からはこれでもあくまで経過措置であり、今後さらなる改善が必要と考えるべきであろう。
また4月1日より道路交通法の施行令も同時に改正され、総重量8トン以上の中大型トラックについて、高速道路上での最高速度を、従来の時速80キロから90キロに緩和する施策も取られることとなった。
これもまた2024年問題に伴う人手不足深刻化や輸送量低下への対策の1つではあるが、制限速度を引き上げれば、交通事故の発生確率は高まる上、交通事故が起きたときの被害も大きくなることが懸念される。
本来、残業規制強化の目的は、トラックドライバーの健康維持と長時間労働による事故の発生を抑制することであったはずだが、このような対応では本末転倒といえるのではないだろうか。
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