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日産のEV戦略、巻き返しの秘策は? 新たな経営計画「The Arc」を読み解く(1/4 ページ)

3月25日に発表された日産の新中期計画「The Arc」。2023年度までの「Nissan NEXT」と長期ビジョンである「Nissan Ambition 2030」をつなぐ架け橋として26年度までの今後3年間の戦略が公表されました。果たしてその中身とは。今回はこれから販売の主力となっていくEVをどのように展開していくのかについて解説します。

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 世界初の量産BEV「リーフ」を2010年に販売したEVのパイオニア、日産自動車。ただ、その後の後継車種の販売が遅れ、世界各メーカーがBEVを販売していく中で後塵を拝し、シェアは低下。他の日本メーカーと同様にEVシフトの遅れが批判されていました。

 日産自動車が3月25日に発表した新中期計画「The Arc」では、EV巻き返しに向けた具体的な戦略が示されました。日産1社だけでなく、「仲間」たちと共につくり上げるEV、そのあり方とは――。今後の成長を大きく左右する日産EV戦略を詳細に解説します。


EV巻き返しに向けた日産の戦略とは(出典:日産自動車)

幅広い自動車メーカーとの協業

 日産の今回のEV戦略の肝は自社だけでなく、他社と共同しEVの開発を進めていく点です。新しいパワートレインであるEVの開発には莫大な研究開発費と設備投資がかかります。1社だけで、その費用をまかなおうとすると、コストが嵩み、利益を生み出すことができません。

 日産は1999年より、欧州メーカールノーとアライアンスを結び、また三菱自動車とも連携し、各社の強みを生かして、地域や車種戦略を展開してきました。今回のEVでもこれまで同様アライアンスを生かし、開発が進められています。ルノーが設立するEV専門の「アンペア」には日産の出資が予定されており、EVのコストを抑えるため、5つのプラットフォームを共用し、新型EVを投入予定。またEVの肝となる電池の調達でも各社が協力し、大規模調達によるコスト低減を行っていくことが発表されています。

 今回の発表でも30車種の新車投入が発表されましたが、うち10車種はルノー/三菱自動車との連携を活用したもの。日産にとってルノー/三菱自動車との連携は車種や地域戦略によって欠かせない重要なものであり、競争が激化するEVにおいてはその重要性はより増していくでしょう。

 そして、日産自動車は、ホンダとの連携も発表しています。日本ではトヨタが他自動車メーカーと連携と深める中で、2番手、3番手の日産とホンダはその連携に含まれていません。将来を見据えれば、日産/ホンダの連携はトヨタグループに負けない競争力を保っていくために必要な戦略であり、両者の長所が組み合わされれば、日本だけでなく世界でもより成長していくことのできるポテンシャルを秘めています。

 具体的にどのような点で協業していくのかは現時点で明らかになっていませんが、この連携が日本自動車業界の「台風の目」であることは間違いなく、今後の発表を注視していく必要があります。


日産とホンダの連携は日本の自動車業界の「台風の目」に(出典:日産自動車)
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