「290円ラーメン」終売でもまだまだ安い幸楽苑、なぜコロナ禍が明けても不調が続いているのか(2/3 ページ)
コロナ禍明けで各業界が復調に沸く中、取り残されているのが幸楽苑だ。290円の中華そばがなくなったとはいえ、まだまだ競合と比較して安い部類に入るのに、なぜ不調が続いているのか。
売り上げが伸びるも、利益を圧迫
幸楽苑は関西のほか四国にも進出したが、現在では西日本から撤退している。2007年に新設した京都工場も2018年にリンガーハットへ売却。関西において店舗の採算性が取れなかったことが原因である。幸楽苑は工場で生産した麺やスープを各店舗に配送するセントラルキッチン方式を取る。ドミナント出店で店舗が密集する関東郊外および東北ではコストを削減できたが、店舗数の少ない関西ではそのメリットを生かせなかったとみられる。
東日本で収益を上げ、その資金を基に出店を続ければ西日本で店舗を拡大できたかもしれない。だが、低価格戦略が利益を圧迫していた。報道によると、発売当初に売り上げの2割を占めていた290円の中華そばは、次第に3割を占めるようになり、注文客が増えていった。売上高は伸び続けた一方、利益率は低下傾向にあったという。そして2015年、原材料費や人件費の上昇に耐えられず、幸楽苑は同商品を終売。現在、中華そばの値段は490円である。
安さ目当てで訪れる客が多かったことから、値上げ後は客離れが進んだ。2016年3月期における国内直営店の既存店客数は、前年比で5.9%減少しており、早くもその影響が出ていることが分かる。幸楽苑はそれまでの拡大路線を取りやめ、不採算店の閉店を続けた。
2017年3月期から2020年3月期までの間、ラーメン事業における直営店数は526→513→498→427と縮小している。コロナ禍でも、既定路線だった事業規模の縮小を続けた。2020年3月期から2024年3月期の業績は次の通りである。
売上高:約382億円→約265億円→約250億円→約254億円→約268億円
営業利益:6.6億円→▲17.2億円→▲20.4億円→▲16.8億円→3300万円
一見、コロナ禍による業績の悪化に見えるが、実は既存店の成績も芳しくない。2021年3月期の既存店客数は前年比で74.4%にまで落ち込んだ。消費活動が正常化した現在でも戻っておらず、2024年3月期の客数は2020年3月期比で73.5%と回復していないのだ。値上げにより客単価は20年3月期比で15.0%増えたものの、客数の減少分を回収できず、既存店売上高はコロナ禍前比で84.5%にとどまっている。
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