「餃子の王将」はなぜ絶好調なのか 「日高屋」「幸楽苑」より早く回復、ヒット商品続々のワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
「餃子の王将」が絶好調だ。コロナ禍の影響は受けたが、「日高屋」「幸楽苑」より早く回復している。背景には何があるのか。
「餃子の王将」の業績が好調だ。直営既存店の売上高は、2021年10月から22年12月まで、15カ月連続で前年同月を上回り続けている。
食材費、人件費、エネルギー価格が上がる中、22年に入って2回の値上げを行っている。それでも勢いは止まらなかった。
餃子の王将の店舗に行くと、1000円以下で食べられる定食は、「餃子定食(餃子2人前、ライス中、スープ、漬物)」(891円)を含めそれほど多くない(東日本の場合)。西日本は若干安くなるが、大きくは違わない。
現状の価格を見ると、餃子は297円(東日本)、275円(西日本)。炒飯は550円(東日本)、495円(西日本)。天津飯は583円(東日本)、539円(西日本)。醤油ラーメンは550円(共通)など、まだまだ安い。
しかし、炒飯・天津飯・醤油ラーメンのいずれかに餃子を足しても、ワンコイン以内に納まった頃を知っている世代から見ると、ずいぶんと高くなったように感じる。それでも顧客に支持されている。
餃子の王将を経営する、王将フードサービス(以下、王将F)の決算を見ると、コロナ禍で飲食店が時短や休業といった自粛を余儀なくされたにもかかわらず、あまり落ち込んでいない。短期間で回復している。
これは、メインで販売している商品が餃子という、テークアウトに強い商品だったからだ。類似した低価格中華の業態でも、メインの商品がラーメンで、サブで餃子も売っている「日高屋」「幸楽苑」は、より落ち込みが大きかった。幸楽苑の場合は、コロナ前から業績が悪化していた事情もあった。
ラーメンに限らず、うどん、そばも含めた麺類は、「麺が伸びる」「スープが冷める」と思われるのか、テークアウト、デリバリーに選ばれにくい。特にラーメンは冷凍自動販売機で売れている。
そこが、昔からあった出前との違いである。麺類は出前の定番だった。
王将F、日高屋を運営するハイデイ日高、幸楽苑を運営する幸楽苑ホールディングス(HD)における20、21、22、23年(23年のみ第2四半期)の売上高推移は次の通りだ。()内は前年同期比。なお、王将Fの決算月は3月、ハイデイ日高は2月、幸楽苑HDは3月だ。
王将F:856億円(4.8%増)→806億円(5.8%減)→848億円(5.2%増)→451億円(11.5%増)
ハイデイ日高:422億円(0.8%増)→295億円(30.0%減) →264億円(10.7%減)→176億円(54.5%増)
幸楽苑HD: 382億円(7.3%減)→ 266億円(30.5%減)→ 250億円(5.8%減)→127億円(1.5%増)
参考までに「大阪王将」のイートアンドホールディングスは次の通り。決算月は2月(20年までは3月)。決算月の変更があったため、21年、22年は前年同期比を出していない。
イートアンド:304億円(4.1%増)→260億円(−)→308億円(−)→244億円(第3四半期、7.2%増)
大阪王将の21年は11カ月決算だが、1カ月平均で約24億円を売っている。もし21年も12カ月決算だったとすると、284億円ほどを売り上げていたと推測される。
そうすると、ラーメン業態の日高屋や幸楽苑は21年から22年にかけて売り上げを落とし続けて、23年になってやっと回復してきている。それに対して、餃子をメインとする餃子の王将と大阪王将は一足先に、22年から回復してきた。
餃子に限らず、焼売、小籠包など点心はテークアウトに向いた特性を発揮して、デリバリーを含めてコロナ禍で売れた。コロナ後も定着して、好調を維持しそうな様相だ。
餃子の王将が好調な要因を解き明かしていきたい。
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