なぜヒグマ駆除が「日当8500円」なのか 背景に、働く人の責任感に甘えすぎる問題:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
北海道空知地方の奈井江町がヒグマ駆除のハンターたちに提示した日当が8500円だとして騒動になっている。周辺の自治体が「賃上げ」する中、なぜ同自治体だけ低賃金なのか。考えられる理由は……。
日本教育による「責任感」の呪縛
まず、日本が世界の中でも異常なほどストライキや、職場の上司に直接、給料アップを要求する人が少ないことに異論を挟む人はいないだろう。
この原因はさまざま考えられるが、1つは日本人の「責任感」の強さが関係していると思っている。われわれは世界的にも珍しい軍隊のような集団教育を小中高と12年間受ける。「自分勝手なことをしてみんなに迷惑をかけてはいけません」「学校、クラスという組織のルールを破ってはいけません」という感じで、「全体のために個を殺す=責任感のある立派な日本人」という思想を徹底的に刷り込まれるのだ。
バカバカしいと内心思いながらブラック校則に従って、学校行事などでは仲の悪いクラスメートたちと「一致団結」してチームワークを築かないといけない。
そういう「責任感」を幼いうちから植え付けられて大人になった人が、会社から提示された賃金体系に不満を言えるだろうか。社員のみんながおとなしく従っている給料やボーナスに異論を唱えられるだろうか。
できるわけがない。酒場やSNSではいくらでも悪口や文句は言えるが、現実の職場に立つと上司に「給料が安い」と文句も言えないし、ストライキなどできるわけがない。
なぜかというと、「他の同僚に迷惑がかかるだろ」とか「自分の給料だけ上がればいいなんて無責任じゃないか」なんて言われてしまうと、幼少期からたたき込まれた「みんなに迷惑をかけてはいけません」がトラウマのようによみがえるからだ。
よく日本人労働者は「社畜」と揶揄(やゆ)されるが、実はそれは臆病で長いものに巻かれているだけではなく、過剰な「責任感教育」によって、自分自身をがんじがらめに縛って萎縮していることも大きいのだ。
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