なぜ? 「残業が半減」したのに「年収27%アップ」──元ブラック企業が取った、思い切った施策(1/2 ページ)
あるIT企業が掲げた「残業時間を50%減らしつつ、年収は20%アップ」という目標は、3年間でいずれも目標を上回る形で達成した。また、多くの上場企業が今なお実現できていない「女性管理職比率30%」を早々に成し遂げている。掲げた目標を次々に達成できた訳とは?
都内のITの企業・メンバーズ。かつては泊まり込みや休日出勤は当たり前のブラック企業だったが、若手幹部を中心とした会社の生き残り施策「プロジェクトX」を契機に、事業転換と働き方の改善を進めていった。
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「プロジェクトX」から数年。2009年には200人程度だった社員数は、2016年には385人にまで増加していた。
働き方のさらなる改善を目指し、2016年に掲げた「残業時間を50%減らしつつ、年収は20%アップ」という目標は、3年間でいずれも目標を上回る形で達成した。また、多くの上場企業が今なお実現できていない「女性管理職比率30%」を早々に成し遂げている。掲げた目標を次々に達成できた訳とは?
ヒントは「思わぬ認識のズレ」にあった
前編記事「オフィスに響く怒号──『経営危機のブラックIT企業』が『残業月15時間のホワイト企業』化した改革の中身」ではプロジェクトXを経て、Web運用事業への注力を掲げたことに触れた。Web運用は「人月単位」で支払いが決まるビジネスモデルだ。これを会社の柱に据えたことで、人材確保の重要性はこれまで以上に高まっていた。
しかし、当時の同社は「そこそこいい会社」に過ぎなかった──と、現在代表取締役社長を務める高野明彦氏(「たか」ははしごだか)は話す。採用力で勝負できるほどでもなければ、離職率も狙い通りには下がっていなかった。
「会社のことは、嫌いじゃないんですけど」。そう言いながら辞めていく社員たちの姿に、疑問が浮かんだ。社員は一体、どんな不満を抱いているのか。
その答えは、経営陣の想定していないものだった。2015年度の同社の残業時間は28.1時間。同業他社と比べると少ない方だったことから「全然問題ないと考えていた」(高野氏)。しかし社員の話を聞いてみると、「月30時間の残業があると、子育てが難しい」「子どもを産んだら、復帰するのが難しい」との声があった。
育児中の本人は時短勤務や定時退社ができたとしても、周囲が残業していれば「帰るのが申し訳ない」「やりづらい」という感覚が生まれる。本人だけが時短で働ければ良いわけではないと気付いた経営陣は、「みんなのキャリアと働き方改革」というプロジェクトを開始した。目標の1つとして「3年間で残業時間を半減させる」ことを打ち出した。2016年のことだ。
「残業時間を半減」 クライアントワーク中心なのに、どう実現したのか
かくして「残業半減」を掲げた同社だが、その事業はクライアントワークが基本だ。残業時間の削減は、顧客にも影響が及びかねない。どのように納得してもらうかが課題となる。
そこで決めたのが、経営陣が矢面に立ち、顧客の理解を促進していく方針だ。レターを送付したり、業務フローを明確化して顧客の合意を取ったり。その際、「顧客側の生産性向上にもつながる」と丁寧に説明し、コミュニケーションを重ねていった。
また、人事評価に「生産性向上目標」を設けた。個人の努力だけではなくチームで取り組むべきとの考え方で、チーム目標として定めた。
前日までの残業時間を朝会で報告し、その日の残業の有無と時間を報告する。また、手元にある業務と所要時間を見える化し、マネジャーがアドバイスしたりチームで分担したりといった取り組みも効果につながった。全チームの目標として定め、日々細かくマネジメントしていくことで効果を上げていき、2018年度の残業時間は月平均で14.9時間に。3年間で半減させることに成功した。
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