業界が縮小する中で、なぜスタバだけ元気に増加しているのか ヒントは、20年前に始めた店舗にあった(3/3 ページ)
長く衰退を続けている喫茶店業界の中で“一強”状態なのがスターバックスだ。なぜスタバだけが店舗を増やし続けているのか、ヒントは競合にはまだ少ない、20年前に始めた「あるスタイル」にありそうだ。
ドトール、タリーズでも郊外店の動きが進む
地方でスターバックスが店舗数を伸ばす状況で、競合はどう動いているのだろうか。
都市部・市街地への偏重傾向が強いドトールでは、以前からガソリンスタンドとの併設店を通じて郊外進出を狙ってきた。2016年に「エッソ」に併設したドライブスルー店をオープン。2019年には、ドライブスルー型の郊外店「ドトールキッチン」をオープンしている。
とはいえ、6月10日時点でドトールキッチンは31店舗しかない。通常サイズのコーヒーを300円で提供するドトールは安さが売りであり、都市部では休憩場として機能する一方、100円台のコンビニコーヒーがあるロードサイドでは安さのメリットは薄くなってしまうのがデメリットだろう。スターバックスように、フラペチーノのような看板商品や強固なブランドがないドトールにとって、ドライブスルー店のメリットは少ないと考えられる。単独ではなくあくまで併設店としてロードサイドを狙う動きには、こうした背景があるのではないだろうか。
業界3位のコメダ珈琲店は、調べてもドライブスルー店の情報が出てこない。フルサービスやくつろげる空間を売りにしている同チェーンにとって「もってのほか」なのだろう。4位のタリーズコーヒーは2023年にドライブスルー店の1号店をオープンしたばかりでありで、6月10日時点で7店舗しかない。価格帯やブランド力で近い位置にあるスターバックスの競争相手になりそうではあるが、出遅れた形である。
全国的に知名度の高いスターバックスはこれまで地方では、まず中心地に1店舗を構えてブランドを浸透させ、物流コストを考えながら緩やかに出店する方針をとってきた。そのため県によっては10店舗もない地域も多く、新店は大きな話題になることもある。都心の一等地を押さえてきたスタバだが、今後は幹線沿いのロードサイド店が増えていくことだろう。それに伴う、競合チェーンの出方にも注目である。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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