なぜ、ミシュランはガイドブックを出すのか? 100年続くオウンドメディア戦略:1分ビジネス雑談
ガイドブックで知られるミシュラン。その歴史をひもとくと、現代にも通じるオウンドメディア戦略があります。
上司に「1分話せ」と言われたら
会社の朝会、上司との出張中、取引先との雑談――。ビジネスパーソンにとって「1分話せるトーク」が必要な場面は少なくない。本連載ではそんなビジネスの小ネタを紹介する。
日本ミシュランタイヤ(群馬県太田市)は創業1889年の世界的タイヤメーカー、仏ミシュランの日本法人です。2023年8月に、本社機能を東京都新宿区から太田市に移転しました。
もともと群馬は、同社が1991年から研究開発拠点を置いているゆかりの地です。当時は自動車のタイヤ事業にも進出していたゴム製品で知られるオカモトと、1989年に日本ミシュランタイヤの前身である「ミシュランオカモトタイヤ」を合弁で設立していました。その後提携を解消し、ミシュランが拠点を引き継いだという流れになります。
そして、ミシュランといえばタイヤと同じくらい有名なのがレストランやホテルのガイドブック『ミシュランガイド』。年間100万部以上が売れていて、日本でも2007年に欧米以外では初となる東京版、2009年には京都・大阪版が刊行されています。
そもそもなぜタイヤメーカーのミシュランが、レストランやホテルのガイドブックを発行しているのでしょうか。その誕生はパリ万博が開催された1900年にさかのぼります。ミシュランの創設者、ミシュラン兄弟がいち早くモータリゼーションの時代が到来することを確信し、3万5000部を無料配布したのが始まりです。
その内容は郵便局や公衆電話の位置まで示した市街地図や都市別のガソリンスタンド、ホテル一覧のほか自動車の整備方法などを掲載していて、ドライバーの移動や旅行をサポートするものでした。
自動車での快適な移動や旅行をサポートして、結果的に自社のタイヤの売り上げが伸びればOKというコンセプトは、まさに現在のオウンドメディアに通じるものがあります。マスコットキャラクターのミシュランマンといい、このあたりのミシュラン兄弟の先進的なマーケティングセンスは目を見張るものがあります。
「ガイドはタイヤのためにある」という原則は現在でも引き継がれています。3つ星評価の意味はそれぞれ「そのために旅行する価値がある卓越した料理」(3つ星)、「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」(2つ星)、「そのカテゴリーで特においしい料理」(1つ星)となっており、こうした意味からも移動や旅行を促す意図が感じられます。
日本ミシュランタイヤが4月15日に官報に掲載した2023年12月期(23年1〜12月)決算公告によると、純利益は16億5400万円(前年同期は17億2000万円)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は5億4800万円(同11億600万円のマイナス)でした。
著者紹介 平野健児
新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し、全国160万社の有力企業データベースを完全無料・ログイン不要で利用できる、企業リスト作成サービス「FUMA」を運営中。
記事中の、日本ミシュランタイヤにおける過去の決算情報や企業概要は「FUMA」でご確認いただけます。
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