苦境の書店、無人店舗が救う? 店内で感じた新たな可能性:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
書店の減少に歯止めがかからない中、各地で無人書店や独立系書店が話題になっている。今回は、無人書店の現状とその可能性について考える。
無人書店を訪問 店内に凝らされた工夫とは?
書店が減少する流れの中で、無人書店や独立系書店が話題になっています。
無人書店のうち、補充やメンテナンス以外基本的に全営業時間店内は無人の「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」に行きました。この店は東京メトロ銀座線・南北線の溜池山王駅構内(改札外)にあります。
東京メトロ、メトロプロパティーズ、日本出版販売(日販)、丹青社が連携して実現したもので、運営は日販が担当しています。
入退店はシステムで管理され、会計はセルフレジによるキャッシュレスで行われます。入退店にはLINEミニアプリが活用され、店頭に掲出されたQRコードを読み込んで名前(ニックネームも可)を登録し、会員登録と会員証発行を行います。発行された入店用のQRコードを入り口のリーダーにかざすと、自動ドアが開きます。2回目以降は、LINEから直接会員証を開くことができます。退店時も同様に、出口のリーダーにQRコードをかざすことで自動ドアが開きます。
決済は、Pay決済(QRコード決済)、電子マネー、クレジットカード、図書カードに対応したセルフレジによるキャッシュレス決済です。現金を取り扱わないことで、運営負荷の軽減にもつながります。
店内には、利用者の問い合わせに対応するため、サポートセンターとチャットやビデオ通話を行うためのQRコードが設置されています。また、ライブカメラで店内を監視し、緊急事態への対応も行われます。
「ほんたす ためいけ山王メトロピア店」は、数年にわたる実証実験という位置付けですが、将来的には人件費高騰や後継者不足といった書店が抱える課題に対する対策として、持続可能な無人店舗モデルを目指しているそうです。
実際に行ってみると、外から見たときに中置きの棚の高さが抑えられており、店内に客がいるかどうかが一目で分かります。これは入りやすくする効果と防犯効果を狙ったものでしょう。
15坪ほどの店舗で中置きの棚の高さを抑えて平置き陳列が多めなので、品ぞろえとしては通勤客向けの売れ筋ビジネス本が多めで300冊程度とかなり少ない印象でした。
筆者の感想としては、どこにでもある売れ筋中心で新たな本との出会いはありませんでした。しかしながら、書店がない地域での有意義な取り組みとなる可能性はあると考えます。むしろ、都心よりも、地方で書店がないショッピングセンターのテナントで入れるなどすると面白いかもしれません。
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