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苦境の書店、無人店舗が救う? 店内で感じた新たな可能性:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
書店の減少に歯止めがかからない中、各地で無人書店や独立系書店が話題になっている。今回は、無人書店の現状とその可能性について考える。
街の書店を24時間経営にする仕組み
普通の街の書店に無人営業の仕組みを取り入れた店舗があります。山下書店世田谷店です。苦戦する街の書店に取次最大手のトーハンが解決策として、スタートアップ企業Nebraskaが開発した「MUJIN書店」システムを導入し、24時間営業の無人書店モデルの実証実験を開始しました。
その実験の舞台となったのが、東急世田谷線の松陰神社前駅そばにある山下書店世田谷店です。2023年3月から、昼間の有人営業(午前10時〜午後7時)に加え、夜間・早朝(午後7時〜翌午前10時)の無人営業を実施しています。利用者はLINEアカウントを使って入店し、キャッシュレスでセルフ会計を行います。
この新しいモデルには、夜間スタッフの人件費なしに店舗を営業できるメリットがあります。これにより従来は閉店していた時間帯にも収益を上げられますし、地域の生活者としてはいつ行っても営業している安心感があります。
山下書店松陰神社店の無人時間帯利用光景(筆者撮影)
世田谷店での実験は成功を収め、2023年8月から正式運用となりました。
実際に無人の店内に1人でいると、ゆっくりと本を選ぶことができて、意外と気持ちがリラックスしました。
この取り組みは、書店業界に新たな道を示すものだと感じました。技術革新を否定するのではなく、上手に活用することが大事だと考えます。
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