はなまるうどんと丸亀製麺 「うどん同級生」でなぜ、明暗が分かれたのか(3/3 ページ)
同じ2000年に1号店をオープンした、セルフ式うどんチェーンのはなまるうどんと丸亀製麺。近年は大きな差が生まれている。一体なぜ、こうした差が生まれたのか。
はなまるうどんは、ある程度地方・郊外にロードサイド店を出店しているが、イオンなど施設内フードコートの店舗が目立つ。都市部では人流減少の影響を受け、施設内店舗も商業施設の時短営業や休業の影響を受けたと同社は公表しており、やはり立地の特徴が業績悪化の主要因といえるだろう。ちなみに丸亀製麺は全店が直営店であるのに対し、はなまるうどんはフランチャイズ店もあり、退店にはフランチャイジー側の意向があるのかもしれない。
丸亀製麺と同様にテークアウト対応店を増やしたものの、そもそもイートインを想定したフードコート店では効果が薄かったと考えられる。2021年5月に丸亀製麺に続く形で「はなまるうどん弁当」を発売するも、後発のため話題性に欠けた点も痛かった。具体的な数値は公表していないが、テークアウト比率は丸亀より低いのではないだろうか。
ブランド力の違いも影響?
はなまるうどんの既存店売上高は、コロナ禍の明ける兆しが見え始めた2023年2月期でも、2019年度比で85.6%と下回っている。2024年2月期は前年比で120.5%と公表しており、2019年度比で103.1%とようやく以前の水準を上回った。それにしても回復のペースは遅い。
はなまるうどんが苦戦する理由には、ブランド力の違いもあるだろう。1号店の出店はくしくも丸亀製麺と同じ2000年だが、はなまるうどんはオープン直後から「かけ(小)」を税抜100円で発売し、安さが売りのチェーンとして規模を拡大し、2013年まで100円を維持した。デフレ時代、うどん以外の飲食店も多い都市部やフードコートにおいて、価格競争に走らざるを得なかったのだろう。
一方の丸亀製麺はロードサイドを中心に出店し、香川県内の地名である「丸亀」というブランド力で勝負した。食べ比べしていなくとも、丸亀ブランドは一定の品質があることを印象付ける。加えて、丸亀製麺ではかけうどんの並を280円で提供しており、はなまるうどんほど極端な価格勝負には出ていない。先に200店舗を達成したのは、はなまるうどんだが、500店舗を達成したのは丸亀製麺が2011年、はなまるうどんが2019年と大きく差が開いた。
安さを売りにしたはなまるうどんと地名のブランド力で成長した丸亀製麺。飲食店は一般的に極端な安売りで集客すると、品質を訴求しにくいばかりか、その後の値上げで客足が離れてしまう傾向がある。この点で、明暗が分かれた部分もあるだろう。
吉野家ホールディングスは近年、はなまるうどんの再生に向けて不採算店の閉鎖を進めてきた。めどが立ったのか、今期は10店舗の純増を見込む。詳細は公表していないが、サラダバーや健康・美容をキーワードとする新コンセプト店の構想も発表しており、女性客を取り込もうとする狙いがうかがえる。丸亀製麺に2倍の差をつけられたはなまるうどんが、今後どうかじを取っていくのか注目したい。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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