OMO時代の書店革命 Amazon Booksの挑戦とコミュニティ型書店の躍進:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
Amazonが新たな顧客体験価値の提供に向けて重ねてきた数々の試行錯誤は、いま、米国や日本の書店業界で起こる新たなムーブメントにつながっている。Amazonの挑戦と失敗から得られた教訓にフォーカスし、書店業界の今後を考えてみたい。
台頭する独立系書店とは?
書店数の減少は、日本だけではありません。米国でも、2012年に1万6819店あった書店は、2020年には1万800店に減少しました。
この背景には、Amazonを始めとしたネット書店の台頭があり、バーンズ・アンド・ノーブルなどの大手書店が品ぞろえと価格で競争に破れていったことが大きな要因です。米国には日本のような再販制度がなく、書店は本の価格を自由に設定できるという事情の違いも影響しています。
一方、米国では大手チェーンではない1〜数店舗を経営する独立系書店が近年増加しています。American Booksellers Association(米国書店協会)によると、2012年から2017年に書店の数は12%減ったものの、同時期に書店の会員数は13%増加しました。独立系書店は2009年には1401書店(1651店舗)でしたが、2019年には1887書店(2524店舗)に拡大しています。(参考:Bookstores Statistics/WordsRated )
独立系書店は、単なる本の販売店ではなく、地域コミュニティの拠点としての役割を果たしています。独立系書店の多くはカフェを併設してくつろげるようにしたり、頻繁にイベントを開催しています。
書店のイベントは、本のプロモーションを兼ねているため、大概無料ということもあり、気軽に参加できます。書籍の趣味が近い人同士が集まるので、仲の良い友人が作りやすいということも考えられます。
独立系書店は、地域密着型の経営や独自のイベントを通じて、顧客との強い結びつきを築いているのです。
日本でも独立系書店は出現してきています。京都では一般の書店にない独自の品ぞろえをした書店が増えてきているそうです。(参考:京都で広がる「独立系書店」 書店冬の時代、生き残るためのアイデアとは/2024年3月26日、京都新聞)
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