働き方の多様化が進み、働く人の価値観も大きく変わった昨今、働きやすい環境づくりに注力する企業はこの数年で増加した。しかし、働く人が本当に求めている職場環境とは何かを探ることは、想像以上に難しい。
本記事では、企業の口コミサイト「OpenWork」を運営するオープンワークの大澤陽樹代表と、OpenWorkの「インターネット業界」カテゴリーなどで総合評価ランキング1位※を獲得したネットプロテクションズの柴田紳代表を招聘(しょうへい)。両者の対談から、「成長できる、働きがいがある企業」の条件とは何かを前編、後編にわたりお届けする。
ステマ? 悪口? OpenWorkのスコアはどこまで信用できるか
――OpenWorkについて、簡単にご紹介ください。以下、敬称略
大澤: 社員口コミと評価スコアを有する転職、就職のための情報プラットフォームです。現在働いている社員だけではなく、1年以上在籍していた元社員も投稿できます。透明性の高いジョブマーケットを目指して運営しているので、ネガティブな口コミも含めて展開しています。

柴田紳(しばた・しん)/ネットプロテクションズ代表取締役社長 CEO。一橋大学卒業後、日商岩井(現・双日)に入社。2001年にIT系投資会社のITXに入社し、ネットプロテクションズの買収に従事。日本初のリスク保証型後払い決済「NP後払い」を創りあげる。2004年より現職
柴田: 少し前だと、企業の口コミサイトは「会社に不満を持つ人だけが書き込む場所」という印象がありました。しかしOpenWorkには、企業の中にいる“平均像”に該当する社員が回答したような、適切な投稿が多いと感じます。
大澤: ありがとうございます。OpenWorkでは、多角的な評価付けを意識しています。私たちは”8・8・3(ハチハチサン)”という情報に分けて、ユーザーのみなさまからお預かりした情報を公開しています。1つ目の8は定量的な8つの項目で「待遇面の満足度」「20代成長環境」などがあり、5段階評価が付けられます。2つ目の8は、定性的な8つの口コミ情報です。「組織体制・企業文化」「働きがい・成長」などがあります。そして最後の3は、3つの“実情報”です。これには残業時間、有給休暇消化率、平均年収の情報が該当します。
柴田: OpenWorkの評価は、外からは見えない企業の実情を知るのに非常に参考になりますよね。

大澤陽樹(おおさわ・はるき)/オープンワーク代表取締役社長。東京大学大学院卒業後、リンクアンドモチベーション入社。中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長、新規事業の立ち上げや経営管理、人事を担当。2019年11月にオープンワーク取締役副社長に就任。2020年4月、代表取締役社長に就任。2022年12月、東証グロース市場に上場
大澤: 現在は1700万件を超える社員口コミと評価スコアが投稿されており、登録ユーザーは645万人います。大学を卒業する就活生の約6割が使っている計算になり、手前みそですが実際に多くの人に役立ててもらえていると自負しています。
――情報の質の高さをどう保っているのですか。
大澤: 2つの方法を取っています。1つ目は、1年以上在籍した正社員または契約社員の人に投稿者を絞っていることです。やはり一定期間コミットして働いた人でないと、その企業の良さも悪さも分かりません。
2つ目は審査体制です。OpenWorkに投稿された全ての口コミに対して、2段階の審査を行っています。機械による1次審査をへたあとは、弁護士を含む専門チームによって作成されたガイドラインに基づいて目視審査を行っています。ガイドラインは、「宣伝目的に該当しないか」「名誉毀損(きそん)や侮辱罪に抵触していないか」「個人情報保護法に違反していないか」といった観点で作成しており、毎年更新しています。「スコアが高過ぎる企業はステマでは?」と考える人もいるかもしれませんが、その確率はかなり低いと考えていただいて問題ありません。
OpenWorkで“意外な”高評価 ネットプロテクションズはなぜ支持される?
――まさに「スコアが高過ぎる企業」がネットプロテクションズです。大澤さんはこの結果をどう見ていますか。
大澤: ネットプロテクションズの評価スコアは5点満点の4.63点※で、圧倒的に高いですね。OpenWorkに口コミが掲載されている7万社を超える企業の中で、上位1%に“余裕で”入る評価です。OpenWorkの評価ランキングを見れば分かりますが、ネームバリューが非常に高い企業と並ぶレベルで支持されていることを考えると、驚異的なスコアだと言えます。
OpenWorkのスコアは10年前の投稿など古い情報については比重を下げて、最新の口コミの点数を反映する仕組みです。ネットプロテクションズは私が注目し始めてから、ずっと高いスコアを維持しています。
柴田: ありがたいですね。社内でも、特に中途入社の社員が新卒社員に「こんなに働きがいを追求できる企業はないよ!」と話しているシーンをよく見ます。
大澤: 新卒だと比較する対象がないから、どれくらい良い環境なのか分からないですもんね(笑)。ネットプロテクションズのスコアを分析すると、退職した人の評価が高いんです。一般的なケースでは、総合評価が4点でも退職者からの評価は2.8点と低くなっていることが多い。ところが、ネットプロテクションズは退職者からも4.4点と高評価を得ています。柴田さん、この点について心当たりありますか。
柴田: 私自身、退職者から相談を受ける機会が多いため、そういった関係性が表れているのかもしれませんね。ネットプロテクションズを退職するとき、私に相談しにくる社員もいます。
大澤: すごいですね(笑)。どんな会話をするんですか。
柴田: 「次はこういう企業でこういう経験をしようと思うんだけど、アドバイスが欲しい」――そんな会話をします。後は「ネットプロテクションズでこういうキャリアを積めてよかったです」とお礼を言われることが多いですね。緩くつながっている退職者は少なくありません。
大澤: 私が今、参考にしている概念に「ハイパー・メンバーシップ型の組織」があります。企業と社員の関係は、今まで雇用者と被雇用者でした。一度つながっても、切れたらそれきりです。しかし今後は、退職者が業務委託先になったり“卒業生”として古巣を応援したり、緩くて薄いつながりをどれだけ作ることができるかが企業の発展において重要である――このような考え方です。
ネットプロテクションズが退職者から評価されるのはまさにそんなつながりを作れている証拠であり、労働市場適応ができた企業だと言えます。そういう企業ほどこれから価値を上げていくことができると思いますし、新しいイノベーションを生み続けたり、高いパフォーマンスを発揮したりする可能性があるんじゃないでしょうか。
OpenWorkから企業の「2年後、3年後の業績が見える」
――お二人の話を聞いていると、OpenWorkから「企業の本質」を見ることができそうです。
大澤: 採用サイトや上場企業のIR情報は企業が自ら発信したもので、今までの企業活動や組織改善の結果が中心です。就職活動で大事なのは、現在の組織やマネジメントがどのような状態になっているのかを知ることです。今の状態が2年後、3年後の業績につながっていきますから。
実際に証券アナリストや金融工学系の学会では、OpenWorkの口コミをAIで数値化すると数年後の財務データや売上高成長率などとの強い相関があることが発表されています。
柴田: OpenWorkと有料契約しているという話は、当社の株主からも聞きます。企業に投資するときには、「必ず『組織体制が健全かどうか』をOpenWorkでウォッチする」と。そのような動きは、投資家の間では一般的になろうとしていますね。ヘッジファンドに対して企業の株式予測のためのデータ提供事業も行っており、求職者だけではなく企業にとってのOpenWorkの重要性も年々高まっていると感じます。
若手層とミドル層、それぞれが求める職場環境とは
――20代の若手層が求める職場環境についてどのように考えますか。
柴田: 若手を育て、働きを認める風土があること。その中でキャリアを伸ばして成長できること。そして良い関係が築けること。これらに尽きると思いますね。当社では「育成は社員全員で取り組むもの」という風土や、「挑戦機会」――つまり自身の業務に熱中できて、難易度が高い仕事にも挑戦できる機会が重要だと捉えています。周囲が自分を育て支援してくれる風土の中で、いくらでもトライができて、やった仕事に対してちゃんとフィードバックがもらえる。今はこういった「成長」と「働きがい」を両立した職場環境こそ、若手層に求められているのではないでしょうか。
大澤: その点については、OpenWorkでも調査をしています。従来だと、仕事に対して貪欲さがない、あまり成長を求めないといった若者像が語られていました。しかし、ここ3年間のOpenWorkの口コミから「入社後3年目以内にギャップを感じたこと」を分類してみたところ、まったく違う姿が浮かび上がってきたんです。最も大きなギャップは、仕事内容や配属について納得できないこと。次に組織の風土がぬるま湯であること。そして成長できる環境がなかったことです。
給与などの待遇が良くないとか、福利厚生が十分ではないとかいったギャップを感じた人は全体の2割以下でした。働きやすさや待遇よりも、このまま成長できない環境で働いて大丈夫なのかと感じるケースの方が今のトレンドのようですね。
――30〜40代のミドル層が求める職場環境についてはいかがでしょう。
大澤: もちろん年収や職務内容も関係すると思いますが、30〜40代のスペシャリティが高い人が真に求めているのは「自身の力が100%発揮できる」ことではないでしょうか。そのためのオンボーディング体制や、経営姿勢そのものを重視する人は多いと思います。
そういう意味で、私は企業と中途入社する人の意識にギャップがあるように感じています。まず企業目線に立つと、30〜40代には即戦力を求めるケースが多いですよね。しかし私はどんな経歴を持つ人であっても、それは難しいんじゃないかと思っています。
柴田: おっしゃる通りです。当社では中途入社の人には「まずは事業や組織風土への理解、既存社員との関係構築に大いに時間を割いてほしい」と伝えています。組織風土や制度、事業内容を把握してもらいたいので、3カ月は採用部署と関連する部署に出向してもらいます。例えば、営業で入った人を運用チームに回すとか。そうすることで、採用部署に戻るころには社内に人脈ができており、よりダイナミックに業務を推進できます。
大澤: へえ、面白いですね! 一般的に、中途採用したメンバーは即戦力と見なす傾向にあり、1日でも早く現場で活躍してくれることを期待する企業が多いですから。
柴田: 時間をかけた分、1年後には大きなリターンが生まれますよ。ネットプロテクションズは、後払い決済など事業モデルが国内では独特です。事業推進において、組織内の縦横の壁を意識することなく、全員が経営目線を持って全体最適を考えることが強みとなるサービスです。時間を投資してオンボーディングを行っているのには、そういった事情もあります。
大澤: ネットプロテクションズは、まさにミドル層が求める職場環境を体現されているように思います。実際に、ネットプロテクションズではキャリア採用で中途入社された多くの方が活躍されていると聞きました。
勢いのある若手層と、積み重ねた経験と成熟したスキルを持つミドル層がどのようにコラボレーションして成果を出しているのか。後編では、OpenWorkで支持されている“ネットプロテクションズ流”の組織運営について具体的に伺っていきたいですね。
(後編へ続く)
※2024年5月17日時点のスコアです。最新ランキングと異なる可能性があります。
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