企業の口コミサイト「OpenWork」の「インターネット業界」カテゴリーなどで総合評価ランキング1位を獲得しているネットプロテクションズ。同社の柴田紳代表とOpenWorkを運営するオープンワークの大澤陽樹代表を迎えた対談企画の後編では、有名企業と並ぶレベルで評価されているネットプロテクションズの文化・風土や組織運営の中身に迫る。
【前編】OpenWork上位企業は何が違うのか 大澤代表に聞く「成長できる、働きがいがある企業」の具体像
「成長」「働きがい」がある環境を築いた独自文化とは
――あらためて、大澤さんはOpenWorkのネットプロテクションズの高評価をどのように考察していますか。以下、敬称略
大澤: ネットプロテクションズがすごいのは、「定量的な8つの評価」(前編で解説)全てで高い点数を出していることです。このようなタイプを私はオールラウンド型と呼んでいまして、非常に珍しい企業です。経営資源が限られている関係上、全ての項目で高い評価を得るのは一般的に難しいものです。しかしネットプロテクションズはそうではなく、八角形のレーダーチャート(定量的な8つの評価)が満遍なく広がっています。
ネットプロテクションズは、特に「20代成長環境」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」といった項目で高評価を得ていますね。このあたりは前編で伺った「成長」と「働きがい」を両立した職場環境を構築されている、というお話につながっていそうです。
柴田: そう評価してもらっている背景には、当社で取り入れている人事評価「360度評価」も関係しているかもしれません。そこでは「育成力」が評価項目の一つになっています。後輩だけではなく、先輩に対して提言できているか。プロジェクトを推進する中で、関連部署のメンバーに対してアドバイスできているか。例え新卒1年目であっても、見る角度はさまざまあります。
大澤: 「全社員で育成に取り組む」ことが人事制度に反映されているんですね。こういった文化は一朝一夕では成立しません。掲げられた価値観が日常の行動として積み上がっていき、気付いたら当たり前になっている。それが文化です。
本来フィードバックは相手のために“贈る”ものです。もらった側は感謝して「贈り返そう」と考えます。そのような文化や風土が醸成されているからこそ、ネットプロテクションズでは成長を感じる社員が多いんでしょう。
――「挑戦機会」「働きがい」の創出については、柴田さんはどのような組織運営を意識していますか。
柴田: 挑戦機会は、当社では「裁量」と言い換えることもでき、自ら手を挙げて「やりたい」と思えることに挑戦できます。そして挑戦には、さまざまな経験を得たミドル層やシニア層からのフィードバックが付いてきます。もちろん、私もフィードバックを贈る一人です。そういった挑戦機会が、成長や働きがいにつながっているのではないでしょうか。
「どういう挑戦をしたいか」「どんなスキルを得るためにどこに異動したいか」などを、全て自分で決めるんです。例えば、こんな思いを事業として形にしたいであったり、こういうキャリアを描きたいであったり――企業として、とにかく個々人を信頼して尊重する。当社の組織運営の根底はここにあります。
その自走力はどこから? ネットプロテクションズ流のティール型組織
大澤: それこそ、ネットプロテクションズが採用しているティール型組織※(以下図を参照)のセルフマネジメント手法に合致していますよね。ただ、ティール型組織はトップダウンが起こりにくい傾向にあります。市場に新しい価値を生もうとしているチャレンジャーとしての側面が強いネットプロテクションズには、トップダウン含めた強いリーダーシップが欠かせないようにも感じます。どうバランスを取っていますか。
※:主にマネージャーが存在しない組織体制を指す。マネジメント層に集約されるような権限を全員で共有する一方で、組織を支える存在として「カタリスト」という役割が存在する(ネットプロテクションズHPより一部抜粋)。
柴田: 当社は基本的にはトップダウンの企業だと思っています。けれども、社員はトップダウンを命令と受け取っていない。それは、私だけでなくシニア層も、絶対にやらなければならないことは「なぜ」という背景から伝えるコミュニケーションを取っているためです。その結果、社員は「ネットプロテクションズは自ら挑戦を選んだり、事業への思いを持って主体的に行動、意思決定したりできる職場だ」と認識してくれているのではないでしょうか。
ティール型組織としてフラットさは維持しながら、トップとして伝えるべきことは情報を全面的に開示した上で伝える。このバランスは意識していますね。
大澤: ネットプロテクションズは上場もしていて、ステークホルダーに対する責任を背負っていますよね。ティール型組織でビジネススピードが鈍化するリスクはありませんか。
柴田: 確かに、株主の期待に応えるため上場後はKPIを重視する側面が強くなりました。しかし、ここまでお話ししてきた組織運営の“本質”は変わりません。
大澤: KPIだけ押し付けるのではなく、「なぜ」を社員が理解した上で目標を目指せる環境にあるんですね。社員全員が自分たちで決定して、背景を理解した上で自走している、そのようなイメージでしょうか。……私も同じ代表という立場ですが、そこに至るまでが非常に大変そうだなと思いました(笑)
柴田: 信頼感のないトップダウンの方が、よほど大変じゃないですか(笑)。そういう私も、代表就任時は“悪しきトップダウン”を行っていました。当時は会社が生き残るためにそれしか選択肢がなかったんですが、それでは「社員は幸せにならないし、熱量を持って働けない」と思ったんです。みんなが気持ちよく活躍できる企業を作りたい。そう考えていた結果として「ティール型組織になっていた」という感じですね。
300人以上いる社員を「全員あだ名で呼べる」 代表と社員の近い距離感
――社員との「信頼」はどのようにして築いたのですか。
柴田: 最も効果が出ているのは「社長座談会」かもしれないですね。座談会を通して親しくなっているおかげで、私は300人以上の正社員全員をあだ名で呼べますし、それぞれの業務内容も把握しています。
大澤: 社長座談会の話は耳にしたことがあります。新卒だけではなく中途の社員とも半年間、毎月実施しているとか。
柴田: 中途であっても月1回6カ月間実施しています。新卒の社員は、入社してから1年半続けていますね。どちらも少人数制で、近い距離感で話せる空気を意識しています。
大澤: すごく特殊だなと思います。代表自らそこまで時間を割くのはかなりのコストなんじゃないかと思って、初めて聞いたときはびっくりしました。
柴田: 投資対効果は高いですよ。座談会を始める前は、自分が面接に関わっていない中途社員との関係は希薄でした。関係性が薄いと、ちょっとしたコメントや行動を曲解されやすいものです。座談会で関係ができたことで、無用な誤解が生まれにくくなりましたね。また社員にとっても社長からアドバイスを得る場になりますし、会社から何を期待されていて自分は何をやりたいのか再確認する良い機会になっているようです。他の企業にも推奨したいですね。
独自の組織運営が若手層とミドル層のシナジーを生む
――ネットプロテクションズの組織運営は、どのような効果を生んでいますか。
柴田: 社員を細胞に例えると、脳が指令を出さなくても全ての細胞が自発的に増殖したり、進んだりしてくれています。情報を得ながらこれがベストだと思うことを考えて前に進めてくれるので、強い組織になりましたね。
ビジネススピードも上がりました。当社の規模は決して大きくありませんが、国内外のさまざまな企業と渡り合えています。2002年から世界でも類を見ない後払い決済サービス「NP後払い」の提供を始めて、国内市場では高いシェアを保っています。他にもB2Bで利用できる後払い決済サービス「NP掛け払い」や、台湾やベトナム向けの後払い決済サービス「AFTEE(アフティー)」も始めました。新規事業は、新卒入社の若手が主体的に取り組んだ結果、形になったものも含めて全て自発的に生まれています。
大澤: 人間はどうしても現状維持バイアスが働くので、リスクを取って挑戦したいと考えても失敗したくないという思いが先に立ってなかなか前に進めません。組織が自走することで、その壁を飛び越えているんですね。
柴田: 本当にそうなんですよ。放っておくとみんな新しいチャレンジをしたがるので、投資が増えがちになる点は難しいところです(笑)。それでも、全員が経営者の視点を持って動いていることは誇らしく思います。
――若手層とミドル層の社員は、それぞれどのように活躍しているのですか。
柴田: 若手層は全員がプロジェクトマネージャーのような感覚を持っていて、どんどん新しいことにチャレンジしています。機会と裁量が用意されている環境なので、その中でいくらでも挑戦できますから。
ミドル層は、これまで自分が培ってきた強みを生かしたいと考えている社員が多いですね。実際に、スキルを生かして売上や利益などの数字を上げることに貢献してもらっています。思いを持って主体的に事業推進にチャレンジする若手層が横糸で、持ち前のスキルや経験で力を発揮するミドル層が縦糸のイメージです。両者がうまく絡み合って、ネットプロテクションズ独自のシナジーを生み出しているように思います。
「ゆがみ」がない職場で年齢問わず活躍できる
――2023年度は約100人を採用したとのことですが、今後の採用計画をお聞かせください。
柴田: 国内の後払い決済は、2024年3月期決算時点で累計取扱高件数が5659億円を突破しました。現在も中小企業向けのレンディング事業など、新規事業を立ち上げようとしています。当社のビジネスの特徴は、後払いの買い手が年間1500万人以上、B2B事業の利用社数が年間70万社近くあるので、蓄積したデータやナレッジを次の事業展開に生かしやすいことです。事業が広がることで、今後もシステムやセールス、マーケティングや企画、リスク管理などに必要な人材は増えますし、採用していく予定です。
大澤: 中途採用は以前から多かったのですか。
柴田: 以前は新卒採用が中心で、若手が多い組織でした。中途採用は2021年12月に上場してから増やしています。スキルを持っているミドル層は、若手層にとっては良い先生ですし会社にとってはハイパフォーマーなので、現場でもものすごく歓迎されていますね。
入社してほしいと思っているのは、主体的に事業推進に関わりたいという意欲があって、人を尊重して周囲の成長を手助けできる人です。そうした人には「成長」「挑戦機会と働きがい」を実感できる環境を提供できると思っています。
大澤: 自分のキャリアを高めると同時に、社会や誰かのために働きたいと思っている人には向いている職場ですね。
柴田: 上下関係による無用な圧力や叱咤(しった)など、変な「ゆがみ」がないんですよね。新卒でも中途入社でも伸び伸びと活躍できる場があるので、自分の力を思い切り発揮できる企業だと思います。
創業から20年以上がたちましたが、私は今やっとスタートラインに立てたという感覚でいます。当社の事業は発展の余地がいくらでもあって、大きく化けると確信しています。今後もOpenWorkで評価されている今の組織運営を生かした、さらなる企業成長を目指したいですね。
提供:株式会社ネットプロテクションズ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年8月14日
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