「うちの部だけ専用の部屋をくれ」 フリーアドレスに対する社員の不安、コスモHDはどう解消した?(1/4 ページ)
コスモエネルギーホールディングスは2025年7月、本社を移転した。移転を単なる引越しではなく“変革の好機”として捉えた同社。新たなオフィスは、社員の交流を生む、新しい働き方を実現するためのオフィスに生まれ変わった。
2025年7月に本社を移転したコスモエネルギーホールディングス(以下、コスモHD)。本社の移転は、1986年にコスモ石油が発足して以来、初めてのことだ。創業40年目にして拠点を移すきっかけとなったのは、旧本社ビルのあった芝浦地区の再開発だった。
「旧オフィスは、典型的な昭和のオフィスだった。設備は老朽化して、コスモらしさを感じられる場所もなかった」──こう話すのは、本社移転プロジェクトグループ長の石井由香子氏だ。
同社は、移転を単なる引越しではなく“変革の好機”として捉えた。理想を掲げるだけでは進みにくい「ペーパーレス化」や「ABW」(Activity Based Working:仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方)といった新しい働き方を実現するための強力な原動力として、本社移転を最大限に活用したのである。
オフィス環境を大きく変化させる中で、従業員の協力はどのように得ていったのか。ABWを導入する際には、現場から「うちの部だけは専用の部屋を作ってくれ」など、変化を不安視する意見もあったという。石井氏が率いるプロジェクトチームは、従業員の不安を「運用面で解消」していった。
昭和のオフィス→会社の進化を体現するオフィスにリニューアル
コスモHDが移転先として選んだのは、日本有数の芸術の街、東京・京橋にある超高層複合ビル「TODA BUILDING」だ。14〜17階と20階の計5フロアを貸し切り、オフィス面積は旧本社と比べて約25%拡大した。
同社は今回の移転を機に、ABWを導入した。コロナ禍で広がったABWでは、リモートワークの併用を前提に、社員数よりも座席数を少なく設計するケースが一般的だ。コスモHDでも、特段の事由がなくてもテレワークを選択できる制度を整えており、新オフィスには200席の社員専用カフェテリアもある。
それにもかかわらず、同社は移転前後で座席数を減らしていない。グループ6社、約1000人の社員に対して、同数の約1000席を確保しているのだ。出社率は以前と変わらず約7割で推移しているといい、一般的なABWのオフィスと比べると、かなり余裕を持った設計となっている。
受付の奥にあるカフェテリア「COSMO CONNECT PARK」は午前8時から午後5時30分までカフェタイム、水・木・金の午後5時30分から午後8時まではバータイムとして営業している。事前申込制でパーティー利用も可能だ。
「フリーアドレスやABWでは、どうしてもコミュニケーションが不足しがちになる。そこで、メンバー同士で気軽に“ちょっと一杯”を楽しめる場所を作りたかった」と石井氏は話す。
カフェテリア内のテーブルや椅子のほとんどは可動式なので、少しレイアウトを変えれば、メディア向けの決算説明会や、社内研修・セミナーなどの会場にも早変わりする。
カフェテリア「COSMO CONNECT PARK」では、従業員同士でメンバーの手土産を分け合ったり、チームの食事会をしたり、さまざまな用途で活用されているという(出所:ボンディッシュのプレスリリースより)
ここで少し、コスモHDの中期経営計画のスローガンである「Oil & New」に触れておきたい。「Oil & New」とは、既存の石油事業(Oil)を強化しながら、新しいエネルギー事業(New)を育てることで、持続的な成長を目指すという同社の経営戦略を表したものだ。
「COSMO CONNECT PARK」の空間デザインには、この「Oil & New」の世界観を取り入れている。カフェカウンターのある入口側から、奥にある会議室エリアへ進むにつれ、徐々にデザインが変化していく仕掛けとした。カウンター周辺は、製油所の装置をモチーフにした配管やスケルトン天井を採用し、「Oil」を表現。奥に進むにつれ、温かみのあるフローリングやパステル調のインテリアが増え、次第に「New」へと変わっていく様子を表現している。
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