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「うちの部だけ専用の部屋をくれ」 フリーアドレスに対する社員の不安、コスモHDはどう解消した?(3/4 ページ)

コスモエネルギーホールディングスは2025年7月、本社を移転した。移転を単なる引越しではなく“変革の好機”として捉えた同社。新たなオフィスは、社員の交流を生む、新しい働き方を実現するためのオフィスに生まれ変わった。

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20以上の他社オフィスを見学 ABW導入に効いた3つの取り組み

 新オフィスを見ると、きっと移転前から従業員エンゲージメントの高いオフィスで、最先端の働き方をしていたのだろうと思ってしまうが、実態は決してそうではなかったという。

 「旧オフィスは、典型的な昭和のオフィス。多少の改修は重ねていたものの、設備は老朽化して、コスモらしさを感じられる場所もなかった」と振り返る石井氏。最大の課題は、会社の中身は進化しているのに、それを体現できるオフィス環境が整っていないことだった。

 例えば、制度的には昼休みをいつでも自由に取っていいはずなのに、いわゆる島型レイアウトの固定席では、気軽に食事をしたり雑談したりできない。10年ほど前に持ち株会社制に移行して以来、各社の専門性や多様性が高まり、中途入社の社員も増えてきた。にもかかわらず、事業会社の垣根を越えた交流の場がない。

 こうしたソフトとハードの“ねじれ”を解消するのが、ABWを導入した一番の狙いである。「多様性の高い社員同士が社内で偶発的に出会うことで、一人一人のキャリア形成や成長機会につながることを期待している」という。

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窓の外を眺めながら1人で作業できる座席(提供:コスモエネルギーホールディングス)

 そうは言っても、昭和から令和に一足飛びに働き方を変えるのは、容易なことではない。ABWの導入を前に「うちの部だけは専用の部屋を作ってくれ」「うちの部はこんなルールにしてくれ」という声が次々と上がった。

 「みんな新しい働き方のイメージが湧かず、不安が先行していただけだった。『コミュニケーション不足が心配なら、みんなでカフェに行く時間を作ればいい』『どうしても近くにいてほしいなら、予約席で固まればいい』など、全て運用面で解消できることだと理解してもらえるよう、何度も丁寧に説明を重ねた」(石井氏)

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本社移転プロジェクトグループ長の石井由香子氏(編集部撮影)

 運用面で不安を解消するために効果が高かったのが「アンバサダー制度」「他社オフィス見学」「トライアルオフィス」の3つだ。

 アンバサダー制度は、移転プロジェクトと自部署の橋渡し役として、約50の部署から1人ずつ“ユーザー代表”を選出してもらったものだ。アンバサダーは、入社10年前後の係長・主任クラスで、上司とも部下ともきちんとコミュニケーションが取れる中堅層をリクエストした。アンバサダーを通じて、新オフィスの運用ルールに意見を出せる場があったことで、不安を取り除く効果があったという。

 他社オフィス見学で訪問した企業は、20社以上にのぼる。ABWの成功事例だけでなく運用上の苦労話も聞かせてもらい、参考にした。アンバサダーにも何度か同行してもらい、先行事例を自分の目で見てABWの伝道師になってもらうと同時に、コスモ版のルールづくりのヒントを得てもらった。

 さらに移転前には、コスモHDの約200人でトライアルオフィスを実施。簡易的にABWを実践してみて、不必要なルールの精査や使われないエリアの検証などをした。この実体験ができたことで、ABW未経験の社員にも具体的な説明ができるようになり、胸を張って「前向きにやってみましょう」と説得できるようになったという。

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昇降デスクも導入(提供:コスモエネルギーホールディングス)

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