ワーキングプア増加? 急拡大するスポットワークは、第2の日雇い派遣となるのか:働き方の見取り図(2/4 ページ)
タイミーの上場でも話題になったスポットワーク。かつて「ワーキングプアの温床」などと非難を受けた“日雇い派遣”との共通点も多いが、どのような課題があるのだろうか。
「雇用が不安定になるのでは」高まる懸念
これらの背景を踏まえると、スポットワークはこれからもどんどん広がっていきそうです。ただ、スポットワークという働き方が、1日数時間などの極めて短期間の細切れ契約である点には注意しなければなりません。長期安定雇用の象徴たる正社員とは対照的で、スポットワークが広がるほど雇用が不安定になるのでは、などと懸念する声も聞かれます。
雇用期間が30日以内の労働者派遣を意味する日雇い派遣は、スポットワークと同じく短期間の働き方であることが問題視されました。世間の注目を浴びるようになったのは、日雇い派遣の大手企業であるグッドウィルなどが違法行為を繰り返していたことが大きなきっかけの一つです。
短期間の細切れ契約である日雇い派遣はワーキングプアの温床、その実体を浮き彫りにしているのが「ネットカフェ難民だ」などと非難を浴びました。そうなると、30日以内どころか、1日数時間など、より短期間のスポットワークも同じ問題を抱えている可能性があるはずです。
ところが、厚労省が2007年に発表した、日雇い派遣労働者の実態調査によると、短期派遣労働者(うち、日雇い派遣で働く人が84.0%)の56.3%がオールナイトでネットカフェを利用したことがなく、たまに利用する程度の人(31.3%)と合わせると9割弱。定期的に利用する人はほとんどいませんでした。
それでも2012年の労働者派遣法改正で日雇い派遣は原則禁止となりましたが、厚労省のパンフレットには「派遣会社・派遣先のそれぞれで雇用管理責任が果たされておらず、労働災害の発生の原因にもなっていたこと」と理由が記されているだけで、ワーキングプアの温床になっているといった内容は見当たりません。
つまり、日雇い派遣が原則禁止となったのは雇用管理責任の問題で、ワーキングプアを生み出す短期間の細切れ契約が理由ではなかったということです。
そのため、派遣事業者が労働者を雇用する人材派遣の場合は認められないものの、人材紹介事業として直接雇用を斡旋する日々紹介であれば、1日だけなど短期間の細切れ契約でも雇用管理責任が果たされないとは言えず合法とされました。日雇い派遣が原則禁止となってから、多くの派遣事業者が日々紹介にサービス転換しています。
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