なぜ休日に業務連絡? 「つながらない権利」法制化の前に考えるべきこと:働き方の見取り図(1/3 ページ)
「つながらない権利」が近年、関心を集めている。業務時間外の連絡対応の拒否を求める声が高まっている。法制化して職場とのつながりを一切遮断すれば解決するかというと、問題はそう一筋縄では行かない。「つながらない権利」問題の本質とは――。
休日に突然、職場から業務連絡が入ってくる――。
そんな経験があるビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。ひょっとすると、この年末年始の休暇中にも業務連絡を受けた人がいるかもしれません。
「つながらない権利」が近年、関心を集めています。勤務時間外の業務連絡に悩む人たちから、対応を拒否できるよう求める声が上がっているのです。
携帯電話やインターネットの普及、SNS、ビデオ会議などのツールも増え、世の中は誰もがいつどこにいても“つながる”ようになりました。世界中の人々とつながる便利さは、それと引き換えに常に束縛を受ける窮屈さやストレスを生み出した面もあります。
職場においても同様です。休日でも連絡をとれる現代は、連絡がつかなかった時に「仕方ない」ではなく「無視」と解釈されてしまいかねません。では、「つながらない権利」を掲げて、職場とのつながりを一切遮断すれば、働き手のストレスは解消されるのでしょうか。問題はそう一筋縄では行きません。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
「つながるストレス」と「つながらない不安」のジレンマ
「つながらない権利」は、仏や伊など欧州諸国で法制化が進んでいます。日本では法制化されていませんが、働き方改革は進められ、2019年には有給休暇の取得促進や残業時間の上限規制などを盛り込んだ働き方改革関連法が施行。勤務時間の減少が図られています。
本来であれば勤務時間が減った分休めるはずなのに、いつ職場から連絡が来るか分からないと身構えていては休むことができません。だからといって、スマートフォンなどの電源を切れば、家族や友人たちと連絡が取れず生活に不便をきたします。
連合の調査によると「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」と回答した雇用者は72.4%に及びます。勤務時間外に業務連絡がある方が普通だ、と言っても過言ではないほどの割合です。
また「勤務時間外に業務上の連絡がくるとストレスを感じる」と回答した人は62.2%に上りました。
しかし、もし「つながらない権利」が法制化された場合の業務対応や業務効率への影響について「緊急性の高いトラブルへの対応の遅れ」を心配だと回答した人が64.9%、「業務効率の低下」についても59.0%が心配と回答しています。
調査から見えてくるのは、“つながる”ことによってストレスを感じる一方、“つながらない”ことによって不安も感じてしまうというジレンマです。緊急時の連絡さえつかなくなれば、後々自分自身が後悔するような事態も起きかねません。
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