上場企業メタプラネットのビットコイン投資が、日本の投資関係者間で大きな話題となっている。特に同社が本来は違法であるはずの「ビットコインETF」を、規制をかいくぐって事実上実現させていることが、多くの専門家から批判を受けている。
2024年に入り、ビットコインを財務戦略の中心に据えたことを発表し、株価が高騰した同社。そのビットコイン保有額は約21億円と評価され、時価総額は200億円超に達している。
この記事では、メタプラネットのような上場企業が本業をはるかに超える規模でビットコイン投資を行うリスクや、それが投資家や市場全体に与える影響について考察する。
株価が乱高下するメタプラネット なぜビットコイン投資に乗り出したのか
同社のビットコイン投資戦略は非常に積極的で、8月6日には新株予約権の付与を通じて約85億円をビットコインに投資する計画を発表した。ビットコインを「最上級の金融資産」と位置付けており、企業価値の向上と通貨の減価に対するヘッジのためにビットコインが長期的に価格上昇すると期待している。
同社は足元で約246BTCを保有しているとみられており、その総額は約21億円と評価されているが、これに対して時価総額は200億円を超えている。負債で購入資金を調達していることもあり、『会社四季報』によれば実績PBRは81.88倍と、同社が保有する純資産と比べて81倍も高い時価総額がついていることが分かる。
メタプラネットはバランスシートにおける資産の大部分がすでにビットコインに置き換わっており、今後もビットコインの比率は高まる見込みだ。同社の保有するビットコインの価格が下落した場合、企業の財務基盤そのものにも大きな悪影響を及ぼすリスクがある。
そんな同社のコアビジネスは、五反田に1店舗のみあるホテルの経営だ。2023年12月期には2億6000万円の売り上げしかなく、6億8000万円の最終赤字となっていた。つまり、同社は本業が赤字体質である中で、その年間売上高における数十年分相当ものお金をビットコイン投資に注ぎ込んでいるわけだ。
そうなると、メタプラネットという法人は事実上、ビットコインを入れておくための箱のようなものといっても過言ではなく、企業価値はビットコインに連動する可能性が高い。
日本では暗号資産をETF(上場投資信託)の原資産に組入れることは認められていない。しかし、上場企業の中身がほぼ全部ビットコインであれば、実質的に株式を介してビットコイン投資が可能になる──というのが、同社の現在の状況だ。
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