優秀だが昇進できない人 採用時と入社後の「評価のズレ」は、なぜ起こるのか?:働き方の見取り図(2/4 ページ)
「あの人は優秀だ」と誰もが認めるような人が、入社後、会社からあまり評価されないケースがある。採用時と入社後の評価のズレは、なぜ起こるのか。理由を辿っていくと、社員マネジメントにおける日本企業の課題が浮かび上がる。
「優秀さ」よりも評価される基準
営業成績を考えると、目標ギリギリだったBさんより、売り上げトップとなったAさんの方が上です。しかしながら、営業所長の指示通り動いていたのはBさんです。もし、AさんとBさんのどちらか1人が次の昇進候補者だった場合、Bさんの方が昇進するということが往々にして起こり得ます。
Bさんの昇進を知ったAさんとしては納得いかず、営業所長との間で以下のようなやりとりが発生するかもしれません。
Aさん:「営業成績トップの私ではなく、Bさんが昇進したのは納得できません」
所長:「昇進は営業成績だけで決めるわけではなく、総合的に判断した結果だよ」
Aさん:「会社の売り上げを一番増やしたのは私ではないですか」
所長:「キャンペーン期間に、新製品の案内を後回しにしていたよね」
Aさん:「お客さまの要望に応える上で、新製品の案内がベストとは思えなかったからです」
所長:「提案してみなければ分からないだろう。今後ヒット商品になる可能性だってある」
Aさん:「私なりに分析しました。新製品は多少興味を引くことはあっても大して売れませんよ」
所長:「それは製品開発やマーケティング担当が考えることだ。キミの仕事ではないよ」
AさんはAさんなりに、会社や顧客のことを考えた上で行動していたはずです。また、結果的に新製品がヒットしなければ、Aさんの眼は正しくやはり優秀だったことになります。ただ、営業所長の指示に従わなかったことには違いありません。
Bさんが昇進したということは、ギリギリとはいえ目標を達成し、かつ指示通りに行動したBさんの従順性が評価されたことになります。個人としては抜群に優秀であっても、Aさんのように指示と異なる動きをされると会社の統制は損なわれます。
会社組織では、より上のポジションになるほど統制をとる側としての素養が求められ、会社方針と足並みをそろえられる従順性が重視されがちです。
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