優秀だが昇進できない人 採用時と入社後の「評価のズレ」は、なぜ起こるのか?:働き方の見取り図(4/4 ページ)
「あの人は優秀だ」と誰もが認めるような人が、入社後、会社からあまり評価されないケースがある。採用時と入社後の評価のズレは、なぜ起こるのか。理由を辿っていくと、社員マネジメントにおける日本企業の課題が浮かび上がる。
「キャリア自律」の機運が高まる一方で
ところが近年、終身雇用の継続が難しくなり、自発的な学び直しや副業の促進などと相まって、キャリアを会社任せにせず自らがデザインするキャリア自律支援の機運が見られるようになってきました。
しかし、従順性至上主義の会社が流行を追いかけてキャリア自律支援を方針に掲げると、他律型マネジメントとの間で矛盾を抱えることになります。従順性至上主義とまでは行かなくとも、他律型マネジメント寄りの会社には、同様の矛盾が生じます。
人口が年々減少する中、会社はかつてのように「意に沿わない人材は入れ替えればいい。代わりはいくらでもいる」という人事戦略がとりづらくなってきました。今いる人材をつなぎとめ、持てるスキルや経験をできる限り精緻に把握した上で、社員の能力を最大限活用することがより重要になってきています。
日本郵便は、社員17万人の職務スキルや配属希望を一元管理できるシステムを構築すると報じられました。少子化が進み人材の稀少性がさらに増していく中、同様に、社内人材の優秀性を詳細に把握し、能力を生かすための工夫に取り組む動きは今後も広がっていくはずです。
一方、働き手の価値観は多様化が進んでいます。ワークライフバランスを大切にし、テレワークなど柔軟な働き方を求め、職務内容や勤務地へのこだわりを強くしています。会社が方針として掲げるか否かにかかわらず、働き手側ではキャリア自律を求める機運が高まってきているのです。従順性至上主義の会社に顕著に見られる他律型マネジメントとは相容れません。
社員の能力を生かそうとすればするほど、社員の志向に寄り添う必要があります。社員の能力は最大限活用したいが、黒いものを白と言う従順性も求めたいという自分勝手なスタンスの会社は、いくら優秀な人材を採用できたとしても、いずれ離れていってしまうのではないでしょうか。
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