「ファン付き」マットレス!? “空調服”メーカーの寝具がじわじわ売れている 開発経緯を聞いた(2/2 ページ)
空調服(東京都板橋区)が手掛ける寝具「風眠」(メーカー希望小売価格2万900円)が注目を集めている。会社名にもなった同社の主力商品「空調服」の仕組みを応用した寝具は、どういった狙いから生まれたのか。同社に話を聞いた。
発想の転換で生まれた風眠
同社の市ヶ谷弘司会長によると、風眠の開発に着手したのは1996年の夏ごろだったという。開発当時はベッドの表面にゴムをレール状に取り付けて隙間を作り、上からメッシュ素材を被せて空気を送るというようなものだった。開発担当の胡桃澤武雄取締役は「もちろん課題や調整すべき点も多かったですが、実際に寝てみるとそれまでの寝苦しさを感じず最高でした」と振り返る。
だが、その後の開発は一度ストップすることになる。同時並行で後に主力商品となる空調服の開発を進めていたため、そちらに時間をとられてしまったそうだ。「当時の技術では風眠を形にすることが難しく、商品化が見えていた空調服を先行させました」(市ヶ谷氏)
風眠の開発が一気に進むきっかけとなったのが、同社が独自開発して特許を取得した「スーパースペーサー」という素材だ。スーパースペーサーはプラスチックでできており、メッシュ構造でありながら立体的なので、人が上に乗ってもつぶされず風が流れる通路を確保できる。
風を通すための最適な素材が見つかり、いよいよ商品化かとなったが、またもや課題にぶつかってしまう。「当時の風眠はファンから外気を取り込む空調服の仕組みを活用していたのですが、そのまま使うと風眠自体が膨らんでしまう難点があったのです」(市ヶ谷氏)
そこで胡桃澤氏は発想を転換。空調服のように空気を取り込むのではなく、排出するという逆の仕組みを思い付いた。結果、膨らんでしまうという現象が解消され、2006年6月にはネットでの試作品販売にこぎつけた。
試作品販売では約2カ月で100台以上を売り上げたものの、寝返りなどによってスーパースペーサーがバラけてしまうという不具合が発生した。そのため、スーパースペーサーを覆っているカバーに固定するなど強度を上げ、2007年から本格販売を開始した。
現行モデルになってからの販売台数は約1万台を突破。ほとんど宣伝はしていないが、口コミでじわじわと人気が拡大しているそうだ。胡桃澤氏によると今も改良を続けているそうで、来年モデルはスーパースペーサーを覆うカバーを取り外し、カバーだけでも洗濯できるようにしたいという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ドンキでバカ売れの家電「置くだけエアコン」 担当者「特に人気の地域がある」、なぜ?
ドン・キホーテ(東京都目黒区)の「どこでも置くだけエアコン」(店舗上限価格4万3780円)が好調だ。同社でもかなりの高価格商品でありながら、2023年4〜8月における売り上げは家電部門でトップ、PB商品でも3位にランクインしているという。人気の理由を同社PB企画開発部の今井潤氏に聞いた。
「のれる扇風機」が即完売 “転売騒ぎ”になるほど人気になった2つの理由
風呂好きの社員が開発した、ユニークな扇風機がある。家電メーカーのサンコーが手掛ける、のれる扇風機「のれせん」(希望小売価格9980円)だ。昨年4月に発売したところ、初回生産分の5000台が完売。今年用意した1万2000台は売り切れ、追加した3000台も完売したという。
ソニーの「着るエアコン」前年比2倍の売れ行き、人気の秘密は?
ソニーの充電式冷温デバイス「REON POCKET」が売れている。昨年は、発売3日で初回出荷分1万台が完売。今年のモデルはどのような特徴があるのか。
「排熱が熱くないスポットクーラー」初日で完売、メーカーも驚く どう開発した?
メーカーも想定外の売れ行き。どうやってこの製品は生まれたのか。



