東京メトロは「郵政IPOの悲劇」二の舞を防げるか? 求められる戦略は:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
東京メトロが10月下旬にも上場すると報じられている。7000億円という大きな時価総額であり、株式も半分程度がIPOを通じて売却されることから、一部では「郵政IPOの二の舞」になるのではないかという懸念がくすぶる。大型IPOには市場期待と実際の企業パフォーマンスにギャップが生じるケースも多い。東京メトロに必要な戦略とは。
東京メトロが10月下旬にも上場すると報じられている。7000億円という大きな時価総額であり、株式も半分程度がIPOを通じて売却されることから、一部では「郵政IPOの二の舞」になるのではないかという懸念がくすぶる。思い出したいのは、郵政3社のIPOが市場に残した教訓だ。
2015年に上場した日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は、日経平均株価指数が史上最高値を記録した2024年でさえ、いずれも株価パフォーマンスが期待を下回った。現時点では上場時の初値を下回った価格で推移している状態だ。
大型IPOには市場期待と実際の企業パフォーマンスにギャップが生じるケースも多い。今回は、東京メトロが郵政IPOの二の舞を避けるために必要な戦略を探っていきたい。
東京メトロが上場を目指すワケ
東京メトロは、日本の首都圏を支える主要な公共交通機関であり、首都圏の経済や社会活動において極めて重要な役割を果たす。東京メトロの前身である営団地下鉄は、1927年に開業し、長年にわたって日本の交通インフラの一部として成長してきた。石原都政下の2004年に民営化された現在でも、その運営と株主は大部分が国と東京都の出資に依存しており、ほとんど公営企業の様相を呈している。
しかしインフラ企業の民営化や、NTTやJTといった旧公営企業の株式売却が取り沙汰される中、東京メトロもその布石として上場を選択するに至ったと考えられる。
一般に上場するメリットとして挙げられるのは、経営の効率化や資金調達の必要性、また新たなビジネスチャンスの創出だ。これまで公共事業としての色合いが強かった東京メトロが、民間企業としての顔を強めることで、どのような変化が生じるのかが関心を集めている。
国内では、他のインフラ企業も民営化を経て上場しており、例えば、JR各社や関西電力などもその代表例である。これらの企業が上場した際の事例を踏まえ、東京メトロがどのようにして公共性と企業利益のバランスを取るかが、今後の大きな課題となるだろう。
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