教育業界で異例の“従量課金”ビジネス 子どもを「子ども扱いしない」UIの真意は?(2/2 ページ)
RISU Japan社の、小学生を対象としたタブレット教材「RISU算数」が面白い。今木智隆社長に、子どもを「子ども扱いしない」UIの真意を聞いた。
スマート姿勢改善ペンがヒット 消費者の欲求を先取り
「自分の考え方は偏っていて教育者的ではない」と語る今木社長。教育事業を展開する上で大切にしていることが一つあるという。
「それは、子どもを大人扱いすることです。例えば、タブレットはブルーライトを抑制したディスプレイを搭載し、長時間の凝視を想定したものを採用しています。RISU算数の画面でも、子どもじみたキャラクターなどは登場しません。他社製品だと、勉強のご褒美にゲームを遊べる機構を採用している商品もありますが、当社はそういう仕組みは取り入れていません」
RISU算数でも、確かにご褒美的な要素はあるものの、それは解読するための暗号問題や、中学受験に出るような応用問題を出題する形だ。とことん算数への知的欲求を刺激する構成にした。問題を解くと「がんばりポイント」というポイントが貯まることによって、子どもがプレゼントと交換できる制度も設けている。その景品もiPhoneや双眼鏡といった実用的なものばかりだ 。
この「子どもを子ども扱いしない」UIは、RISU Japanの他製品にも表れている。同社では「RISU AIペン」と称し、子どもの姿勢改善シャープペンシルを販売。これまで同種の製品では「姿勢矯正ベルト」といった商品が存在するものの、これはあくまで子どもに強制させるアプローチだと言える。
その点RISU AIペンでは、360度近接センサーをペンの末端に内蔵することによって対処した。このセンサーによって、子どもの目と、ペンの距離とを測定。姿勢が悪化するとペンの先端部が物理的に引っ込んでしまう仕組みだ。この機構が目を引き、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」内のコーナー「トレンドたまご」で「2023トレたま年間大賞」を受賞した。他のメディアでも取り上げられ、ヒット商品になっている。
多様性が叫ばれ、顔が見えない者同士のコミュニケーションが当たり前なインターネット主体の時代では、相手の属性や年齢を分析するだけは効果的なマーケティングができなくなってきた。同社の「子どもを子ども扱いしない」UI設計は、消費者のインセンティブをよく理解していて合理的だ。商品開発のヒントにすべき事例といえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
そのDXツール、本当にいります? “情弱” 経営者にならないためのコツとは
松尾豊東大教授が明かす 日本企業が「ChatGPTでDX」すべき理由
松尾豊東大教授が「生成AIの現状と活用可能性」「国内外の動きと日本のAI戦略」について講演した。
日立が「1兆円買収」した米ITトップを直撃 日本企業の“根本的課題”とは?
日立の執行役常務と、デジタルエンジニアリングビジネスユニット(BU)のCEOも務めるGlobalLogic社長兼CEOのニテッシュ・バンガ氏に、日立との統合がシナジーをもたらした要因や、日本市場の展望について聞いた。
マイクロソフト「Copilot+ PC」の衝撃 「AI PC」が起こす地殻変動
生成AIをPC本体に組み込んだAI内蔵PC(AI PC) が今後、普及していきそうだ。日本マイクロソフトは先頭を切って日本市場にAI機能を付けた「Copilot+ PC」を投入。狙いは?
日立の好業績を牽引する“巨大事業”の正体 日立デジタルCEOに聞く
日立は2009年当時、日本の製造業で過去最大の赤字だった状況から再成長を果たした。復活のカギとなった巨大事業、Lumadaのビジネスモデルとは――。日立デジタルの谷口潤CEOにインタビューした。
PayPay副社長「金融サービスのユーザー増やしキャッシュレスのトップに」
キャッシュレス市場はソフトバンクグループのPayPay、楽天グループ、ドコモ・アマゾン連合の3強が激しくぶつかり合う形になる。この「激戦区」でどう戦おうとしているのか。PayPayの安田正道副社長兼金融事業統括本部長に聞いた。
銀行に将来はあるか? NTTデータ有識者に聞く金融ビジネスの未来図
第三者的な立場で長年にわたり金融業務の変遷を見てきたNTTデータの山本英生 金融イノベーション本部イノベーションリーダーシップ統括部長に金融ビジネスの将来像を聞いた。
