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PayPay副社長「金融サービスのユーザー増やしキャッシュレスのトップに」(1/2 ページ)

キャッシュレス市場はソフトバンクグループのPayPay、楽天グループ、ドコモ・アマゾン連合の3強が激しくぶつかり合う形になる。この「激戦区」でどう戦おうとしているのか。PayPayの安田正道副社長兼金融事業統括本部長に聞いた。

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 キャッシュレスの比率が中国、韓国、英国と比べて低い日本。それだけにまだ伸びしろのある分野だ。この市場にはデジタル化による新技術を使った便利なサービスが次々と登場し、顧客獲得競争が激化している。

 4月10日にはNTTドコモとアマゾンジャパンがポイントサービスで協業を発表。キャッシュレス市場はソフトバンクグループのPayPay、楽天グループ、ドコモ・アマゾン連合の3強が激しくぶつかり合う形になる。この「激戦区」でどう戦おうとしているのか、コード決済サービスにおけるシェアがトップというPayPayの安田正道副社長兼金融事業統括本部長に聞いた。


安田正道(やすだ・まさみち)氏 1983年に旧東京銀行に入行、2011年に三菱東京UFJ銀行執行役員国際企画部長、17年三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務CRO、21年三菱UFJモルガン・スタンレー証券顧問、PayPay顧問、22年1月からPayPay副社長・金融事業統括本部長

強い開発力 決済、金融、資産運用の「スーパーアプリ」に

 PayPayのユーザー数は6300万人(3月31日現在)を超え、QRコードにおける決済金額、決済回数のシェアが約3分の2を占めている。

 安田副社長はキャッシュレスの現状について「まずは国内でQRコード+クレジットカードでナンバーワンのキャッシュレス決済会社になりたい。決済金額ではクレジットカード会社に負けている一方、決済回数でみるとキャッシュレス全体の6回に1回以上はPayPayが使われていて、どのキャッシュレスサービスにも負けていない」と説明する。

 安田副社長は「PayPayの強さはプロダクトの開発力にある」と話す。「マーケティングに力を入れていると言われますが、プロダクトあってのマーケティングなのです」。

 例えば他社にない機能として、決済時に銀行やATMからチャージして支払う赤い画面の残高払いと、「PayPayカード」と連携して翌月まとめて支払う青い画面の「クレジット」を、PayPayアプリのトップ画面のスワイプによって変更するだけで支払える。残高をチャージする必要がなく、PayPayカードの支払い請求と合わせて翌月払いとなるため、PayPayクレジットで支払うユーザーが多くなっているという。

 安田副社長は「このサービスは社内で『こういうカードがあれば良いよね』ということで、2022年のヤフーカード時代に始めました」と胸を張る。

 PayPayは決済だけでなく、資産運用など幅広い金融サービスを提供する「スーパーアプリ」を目指し、進化してきたという。ユーザーの利便性向上を常に意識し「週に1回はアップデートしています。そのためのエンジニアを多く抱えていて、そのうち8割が外国人で約50カ国から日本に来ていただいています。アプリの開発は2022年10月からインドと東京の2拠点体制となり、私の担当している金融プロダクトの中にも、インドで開発しているプロダクトがあります」と話す。


残高をチャージする必要がなく、PayPayカードの支払い請求と合わせて翌月払いとなるため、PayPayクレジットで支払うユーザーが多くなっているという(以下、資料はPayPay提供)

証券口座が倍増

 2024年から、従来のNISA制度が恒久化、そして非課税投資枠が大幅に拡充される形で新NISA(少額投資非課税制度)がスタートした。PayPay証券でもNISA口座の取り扱いを開始し、PayPayユーザーの送客に力を入れている。PayPayアプリから株式や投資信託を購入できる「PayPay資産運用」のUI/UXを改善し、100円からの少額や普段の決済でたまったPayPayポイントでも資産運用が始められるなどの利点から、口座数は昨年度より2倍以上増加した。

 「PayPayカードには100%出資しており、金融リボルビングやキャッシングを伸ばしていきたいと考えています。みずほ証券やソフトバンクが出資していたPayPay証券には、2023年4月にPayPayが35%を出資し、筆頭株主になりました。新NISA開始に際して、この1〜3月の期間限定で、NISA口座でのつみたて購入によって、PayPayポイントがより多く付与されるキャンペーンを実施しました。この成果もあって、証券口座数は100万口座を超えました。出資前の約50万口座と比べて倍に増え、口座数としても大手ネット証券5社を猛追するところまでになっています。特に資産運用初心者に使いやすいアプリを目指しています」

給与デジタルが追い風になるか

 安田副社長は「PayPay、PayPay証券とも若者が多く利用していると思われていますが、年代的には若い人が中心というわけではありません。例えば60代以降は他の年代と比較して少ないものの、利用者は各年代にバランスよく存在しています」と話す。

 金融ビジネスが順調に伸びている中で、近い将来に期待しているのが給与デジタルの実現だという。現在、給与振込は銀行口座がメインになっているものの、法令の改正によって資金移動業者でもできるようになった。

 2023年4月に、PayPayも給与デジタルの申請をした。安田副社長は「これが実現すればPayPay銀行との連携も密になり、金融サービスをさらに拡大できる」と意気込む。

 給与は銀行口座に振り込まれるのが当たり前だった。だがこれからは銀行以外のスマホアプリにデジタルで振り込まれる時代になりそうだ。そうなれば、キャッシュレス決済や決済アプリに付随するサービスが加速するだろう。社会全体のデジタル化も一層進みそうだ。

 銀行が破綻した際に、預金者を保護するための預金保険機構がある。デジタル給与の場合には、破綻した際には4〜6営業日以内に口座残高の全額を支払うための保証の仕組みが設けられることになる。この点が大丈夫なのか気になるところだが、安田副社長は「PayPayが万が一に経営破綻した場合でも、利用者に対しては個別に補償対応がすぐにできるようにしているので、安心してもらいたい」と自信を示す。

加盟店の与信管理にデータを活用

 ソフトバンクグル−プの一員でもあるPayPayは、各グループサービスの利用者のデータを含めると、膨大な顧客データを活用できる可能性を秘めている。安田副社長は「利用者の同意を得た上で、そのデータを適切に管理しながら活用すれば、ビジネスチャンスにつながります」と意気込む。

 「3月から加盟店のファクタリング(売掛金の支払期日前に資金化する金融サービス)や与信判断に使い始めています。加盟店の売り上げデータなどから、このお店がどこまで資金調達できるか、モデルを作って判断できるようになります。一気に進めるのではなく、徐々に進めていきたいと思います。これはメガバンクもやっていないビジネスです。PayPayの英知を集めてファクタリングを進めたいですね。ここで作ったモデルはPayPay銀行にも応用できますし、消費者向けにも使えます」

 いま流行の生成AIの利用にも前向きだ。

 「業務ツールとして社内では活用していますが、外部向けにはまだ使っていません。しかし、ビジネスではターゲットマーケティングの分野などで使えると思います。当社ではChatGPTをそのまま使うのではなく、PayPayでスクリーニングした独自のものを作って使っています。日本語の環境もあるので、オーダーメイドのAIを使っていきたいと考えています」


エンジニアの約8割が外国籍だ

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