“日立流”生成AI時代の組織再編 「ルマーダ売上2.65兆円」につなげる狙い(1/2 ページ)
日立製作所が組織再編を進めている。米シリコンバレーに本社を置く「Hitachi Vantara」のデジタルソリューション事業を分社化し、新たに「Hitachi Digital Services」を設立する。その狙いは?
日立製作所(日立)が11月から社内組織再編を進めている。米シリコンバレーに本社を置くストレージを中心としたデータインフラストラクチャやクラウド、IoTサービスを展開してきた「Hitachi Vantara」のデジタルソリューション事業を分社化し、新たに「Hitachi Digital Services」を設立する。
今回再編したHitachi Digital Servicesと、Hitachi Vantaraのもと、急速に進化する生成AIの活用を通じた全社のデジタル変革を進める狙いだ。10月31日には都内で会見を開き、組織再編の狙いを発表した。日立の德永俊昭副社長が、再編の意図を説明する。
“One Hitachi”で成長 OT分野とシナジー加速
「今回の組織再編は、単なるデジタル部門の再編にとどまらず、日立全体がグローバルに“One Hitachi”で力強く成長していくための重要な取り組みです。デジタル市場は生成AIの登場によって、かつてないパラダイムシフトが起きています。今回の再編は、この生成AIの登場による大きな変化を捉えたものです。私どものデジタルケイパビリティ(デジタルを活用するために組織として持つべき能力)の強化を通じ、日立グループの最大の強みともいえる鉄道、エネルギーといったOT(Operational Technology)分野とのシナジーを加速する価値創造を目的としています」(德永副社長)
日立は2021年にシリコンバレーのソフトウェア企業「GlobalLogic」を買収して以降、グループのデジタルエンジニアリングに注力している。日立が16年から推し進めるDX事業「Lumada(ルマーダ)」を強化する形で、今年に入ってからは生成AIを活用したグループの在り方を模索している。Hitachi Digital Services設立もこの一環であり、分社化して組織再編することによって、OTとITの融合を強化していく。
Hitachi Vantaraはもともと、大きく2つの事業領域を展開していた。一つが業種アプリ開発や運用といった「OT×IT」の分野。もう一つがストレージサービスなどデータインフラの領域だ。この2つの領域は事業内容も大きく異なり、必要となる従業員のスキルも異なっていた。
今回新設するHitachi Digital Servicesは、この2つのうち、前者の「OT×IT」の分野を担う。そして分社後のHitachi Vantaraは、後者のデータインフラの領域を継承する。
Hitachi Vantaraは今後、サーバやストレージの仮想化技術(ソフトウェアによって複数のハードウェアを統合し、ソフト上で仮想的に再現する技術)の研究開発を進めるという。オンプレミスや複数の異なるクラウドをかけ合わせたハイブリッドクラウドの領域に仮想化技術を広げていくことによって、生成AIの台頭で需要を見込むデータインフラ分野での拡大を目指していく。
分社化した狙いを、日立の阿部淳専務がこう説明する。
「一つの会社で全てをカバーするより、人材や投資をそれぞれのマーケットに提携したほうが顧客のニーズにより深く入り込めると考えました。今回の再編は、急激な進化を続ける生成AIの爆発的な需要を取り込み、われわれのグローバルでの成長加速につなげていく事業戦略に基づいたものです」
組織再編のポイントは大きく3つある。1つ目が、Hitachi Digital Servicesは海外の社会インフラや産業分野をターゲットにOTとITをつなぎ、価値を生み出す新会社として設立すること。生成AIにも重点投資することによって、業務プロセスの自動化などを推進していく。
2つ目が、Hitachi Vantaraと、日立のITプロダクツ事業部門を分社化して設立する「日立ヴァンタラ」の2社を一体運営体制とし、生成AIを支えるハイブリッドクラウドストレージや、データインフラサービスの強いブランドを作っていくこと。
3つ目が、Hitachi Digital ServicesとHitachi Vantara、そしてGlobalLogicの3社が連携することによって「OT×IT×プロダクト」の日立ならではの強みをグローバルで発揮し、海外ITサービス事業を売り上げ1兆円まで成長させていくことだ。
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