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“リースの資産計上”義務化で「企業の負債が大幅増加」──他にどんな影響が?古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

2027年度から、企業の有するリース資産や負債は全て、貸借対照表に計上することが義務付けられる。企業経営にどのような影響があるのか。

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 2027年度から、日本企業におけるリース取引の会計処理に大きな変化が訪れる。企業会計基準委員会は、新しいリース会計基準を議決した。その内容は、企業の有するリース資産や負債を全て貸借対照表に計上することを義務付けるというものである。

 この変更は、企業の財務状況をより透明にする一方で、企業経営にさまざまな影響を与えることが予想される。本記事では、この会計基準の変更がどのように企業に影響を与えるのか、その詳細を解説する。

リース会計基準の変更とその背景

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企業の有するリース資産や負債は、全て貸借対照表に計上することを義務付けられる(提供:ゲッティイメージズ)

 リース取引には「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2つがある。

 ファイナンスリースは、資産の購入に近い形態のリースだ。ファイナンスリースでは契約に基づいて資産を利用するものの、契約期間が終了する頃には資産の所有権がリース利用者に移ることが多いのが特徴だ。

 一方のオペレーティングリースは、資産を借りて使用することを目的としたリースで、契約終了後は資産が貸し手に返却される。この形式では、リース期間中も資産のリスクや所有権は貸し手に残り、リース利用者は単に使用料を支払うのみである。

 これまで日本では、ファイナンスリースは企業の資産・負債として貸借対照表に計上されてきたが、オペレーティングリースはオフバランスシート取引とされ、損益計算書上のコストには反映されるものの、財務諸表には反映されていなかった。

 しかし、国際的な基準に合わせるため、日本でも全てのリース取引を貸借対照表に計上することが義務化されることになる。

 オペレーティングリース取引を貸借対照表に計上することで、企業の負債の大幅な増加が懸念されている。企業経営においては、自己資本比率や総資産利益率(ROA)が重視される場面もあるが、これらの経営指標が低下する可能性が高い。

 特に、不動産業、航空業、運輸業、小売業のようなリースを多用する業界では、負債の増加が顕著に表れることが予想されており、その対処が急務となる。

リース会計基準の変更が株価に与える影響

 リース会計基準の変更によって、企業の貸借対照表にリース負債が計上されることで、一部の財務指標が悪化する可能性があるが、これが直ちに株価に大きな影響を与えることは考えにくい。その理由は、リース取引が企業経営の実態に与える影響は限定的であり、リース関連の取引はすでに投資家や市場によってある程度織り込まれているためである。

 というのも、会計基準の変更というものは企業の実態そのものに変化をもたらすものではない。多くの金融機関や市場参加者は、すでにこれらの業界でリース取引が行われていることを認識しており、基準変更による一時的な財務指標の変動は長期的な企業価値には大きな影響を与えないと見られている。

 ちなみに2019年に、国際会計基準を採用している企業については先んじてリース契約をリース取引と見なし、財務指標上の負債計上が義務化された経緯がある。当時も財務諸表の安価から株価の急落などを悪影響を懸念する声が増加した。

 しかし、そこから5年が経過したものの、国際会計基準導入企業において、19年の基準見直しは企業の信用格付けや中長期的な株価に大きな悪影響を与えなかった。企業経営の実態が変わらない限り、会計処理の変更による一時的な負債増加は、市場によって適切に評価されるのだ。

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