名刺の裏に金額を書いて「せーの」で出してきた クルマ買い取りの“入札制度”が面白い:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
中古車市場は、業者オークションの台頭と買い取り専門店の増加で大きく変化した。今、買い取り業者はどのようにクルマを査定して買い取っているのか。筆者が一括査定を申し込んでみたところ……
「クルマは資産」という考えはそろそろ終了か
2時間後にはもう1社(実は最初に予約した業者)が出張査定に来る予定だった。来てもらって事情を説明して買い取り査定をしてもらうことも可能だが、ほんのわずかな価格差で先の契約をキャンセルするわけにもいかないので、電話で事情を話し、出張査定をキャンセルした。
こうした日常を繰り返し、買い取り業者は中古車を仕入れている。出張査定ではなく、画像を送ってネット査定をしてもらうこともできる。インターネットで効率よく買い取りができる半面、ライバルも多く薄利多売となっているわけだ。
カーシェアやサブスク、残価設定など、従来にはなかったクルマの利用や購入方法が用意されることで「クルマを所有する」という考えは薄らぎつつある。クルマを売ってカーシェアなどに切り替える動きが増えれば、一時的には中古車市場は膨れ上がる。
ビッグモーターの数々の不正で中古車販売の信用は地に落ちた感があるが、それでも中古車市場が機能しなければ新車も販売できない。中古車市場が健全で元気であることは、新車を販売する環境づくりにも役立っているのだ。
そもそも中古車の買い取りと販売は、ギャンブル性もあるものの、クルマの知識を持っている人にとっては、うまみと面白みのある取り引きだ。エコカーやSUV全盛の今、ちょっと古めのクルマの人気が再燃している。まだしばらく、日本の中古車市場はにぎわいを保てそうだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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