なぜクルマのコーティングが人気なのか ユーザー心理を利用する術:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
カーディテイリングビジネスが活況だ。日本では1980年代から徐々に市場が拡大。コーティング技術や洗車機の性能も向上し、安心できるサービスになっている。需要に応じて形を変えながら、さらに発展していきそうだ。
クルマの美観を高め、維持するカーディテイリングビジネスが活況を見せている。すでに日本の新車市場は縮小傾向にあるが、カーディテイリング市場規模は年々拡大する傾向にあるのだ。
日本の自動車産業全体の市場規模は70兆円とも言われているが、少なくともそのうちの数%はカーディテイリングが占めていると思われる。
元々日本は欧米と比べると、洗車ビジネスが占める割合は自動車産業の中でも少なかった。北米では街のあちこちに洗車業者が存在し、手洗い洗車サービスを行う様子が見られたものだ。これらは移民の安い労働力によって支えられていたが、全体の市場規模としてはかなりのボリュームになる。
雨の少ないカラッとした気候のため、砂埃がクルマに付着しやすく、洗車の需要は高い。さらにクルマの塗装面を鏡面に磨き込む傾向も早くから芽生え、鮮やかなボディカラーのクルマが光沢感を誇るように街を走るようになった。
そもそもFAXの時代から通信販売が普及していた広い北米市場でカーディテイリング用品を販売してきたメーカーは、1980年代から高級ワックスやカーシャンプー、ボディを磨き上げるネルのクロス(ワックスがけ用のふき取りクロス)などをクルマ好き向けに販売してきた。
その頃の日本はというと半練りワックスという研磨剤入りのペースト状ワックスが主流だった。自宅やガソリンスタンドで洗車し、駐車場でワックスを掛けるというのが1970年代ごろまでの日本の洗車事情だった。
洗車を専門に行う業者は戦後あたりから存在はしていたが、在日米軍の軍人が乗っていたアメ車を購入した日本人がリフレッシュのために内装の丸洗いを依頼するようなケースを除けば、深夜や早朝にタクシーを素早く洗うサービスが目立つくらいであった。自宅でクルマを洗える環境をもつユーザー以外は、ガソリンスタンドで給油のついでに洗車するのが一般的だったのだ。
しかし自家用車が当たり前になり、クルマが大きく豪華になっていくと、洗車の環境もグレードアップされていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
セダンが売れる時代はもう来ないのか クルマの進化で薄れていく魅力
SUVやミニバンと比べて、セダンの人気は衰退している。目新しさが魅力だったSUVも走行性能などが高められたことに加え、ドライバーの意識も変わっている。スポーツカーも衰退しているが、所有して運転する楽しさを追求できるクルマも必要だ。
なぜテールランプがまぶしいクルマが増えているのか クルマづくりに欠けている視点
前走車のテールランプをまぶしく感じることが増えた。平時にリアフォグランプを点灯するのは問題外だが、ブレーキランプの規制変更によるデザイン性の追求という要因もありそうだ。環境性能や安全性だけではなく、周囲に配慮する工夫もますます必要になるだろう。
クルマの“顔つき”はどうやって決まる? デザインに表れる思惑とは
自動車のフロントマスクは各メーカーにとって重要な要素だ。ブランド戦略によってその方針は異なる。海外メーカーには、デザインの継承を重視しない姿勢も見られる。一方、国内メーカーも方針はさまざまで、デザインから各社の思惑も見えてくる。
キャンピングカー人気は続くのか 需要維持に必要な要素とは?
日本のアウトドアブームが落ち着いてきた一方、キャンピングカーの人気は衰えていない。展示会では大型車両をベースにした展示車が増え、熟年オートキャンパーの心をつかんでいる。しかし、ブームによるマナー低下に歯止めをかけないと、衰退につながりかねない。
クルマの価格はまだまだ上がる? ならば海外格安EVにどう対抗すべきか
クルマの価格が高くなったという声をよく聞く。昔と比べて装備が充実していることもあり、価格は上がった。今後も、電動化やソフトウェアの高度化など、価格が上がる要素ばかりだ。安価な中国製EVなどに負けないためにも、真の価値を打ち出していくことが必要だ。
