なぜクルマのコーティングが人気なのか ユーザー心理を利用する術:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
カーディテイリングビジネスが活況だ。日本では1980年代から徐々に市場が拡大。コーティング技術や洗車機の性能も向上し、安心できるサービスになっている。需要に応じて形を変えながら、さらに発展していきそうだ。
日本特有のカーディテイリングビジネスとは
1980年代に入ってコイン洗車場が整備され始めると、ガソリンスタンドにある自動洗車機では満足できない洗車好きが、週末や夜間にせっせとクルマを洗うようになった。ミニバンブームとなってからは、週末に家族でコイン洗車場で洗車を楽しむ姿を見ることも珍しくなくなった。
自分でクルマを洗い、磨くことを楽しむ人たちにとって、1日費やして愛車を美しくすることは達成感が得られる作業だったのだ。その頃から米国の高級ワックスが本格的に上陸。研磨成分の入っていない硬いワックスを塗り広げて、濡れたような光沢感を得て満足するクルマ好きが続出する。
その後、従来は板金塗装業者が行っていたボディ塗装の表面を研磨する作業を専門に行い、水アカや磨き傷などを除去した平滑な塗膜にポリマーコーティングを施すサービスが普及していった。こうして日本型のカーディテイリングビジネスは1980年代あたりから徐々に拡大、充実化の様相を見せていくのだ。
カーディテイリングサービスといっても、実際はかなり広範囲にわたる。洗車やコーティングのサービスだけでなく、その材料や道具を扱う業者も増え、プロシューマーからコンシューマー向けの商品までその充実ぶりはすさまじい。
カー用品店やホームセンターで手軽に手に入る洗車用品も豊富だが、それでは飽き足らず、洗車用品の専門サイトや通販サイトでこだわりの洗車用品を購入するマニアも少なくない。カーラッピングやプロテクションフィルム、ホイールや内装のリペア、ウインドーフィルムにウインドーのリペア、広義では板金塗装もカーディテイリングビジネスに含まれる。
洗車だけに絞って見た場合、ユーザー側の環境の変化も大きく影響している。共働きの増加による余暇時間の減少やインターネット、SNS、スマホゲームの拡大など余暇の過ごし方にも変化が生じ、1日洗車に費やすほど暇ではなくなってきている。
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