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業務効率化は「自部署にはムリ」じゃない! 非IT社員をDX人材にする、KDDI流育成法(2/2 ページ)

「この業務をデジタルで効率化したいけど、自分たちでやるには知識が少ないし、時間もない。やはり専門チームに任せるべきだろうか」――そのような課題を抱えている事業部門は多いだろう。ベンダーやIT部門などに頼らず、自分たちでシステム開発するため、デジタル人材をどのように育成すれば良いのか?

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スキルトランスファーを促進する仕組みづくり

 KDDIの場合、副業や兼務などによりデジタル人材を育ててきたが、実はそれで終わりではない。もしそれで終わってしまっていたら、デジタル人材を増やすために、毎回、他部署の社員を受け入れなければならないからだ。

 スキルを部内で共有するスキルトランスファーを促進し、DXの裾野を広げるためにどのようなことをしているのだろうか。鳥井氏は、物流部門における事例を挙げる。

 「物流センターの購買部門でBIツールを使ってDXを進めたいという相談があった。10人に対して勉強会を開き、そのうちの1人がBIツールを使って作れるようにもっていった。ほかの9人は見て使う。もちろん作れるようになった人には彼らにも伝えるスキルトランスファーをお願いするようにした」

 KDDIの物流部門は東日本と西日本にあり、それぞれでBIツールを使える人材が増えてくると、お互いが競い合うようにスキルトランスファーが生じ、勉強会のたびに人数が増え、ツールを使いこなせる人も増えてきたのだ。

 「最初に作れるようになった人が、作ったものを見せると、周りの人が自分でも作ってみたいと思うようになり、どんどん広がっていった印象です。“見せる”“見せてもらう”という雰囲気を醸成するような仕掛けづくりがスキルトランスファーを促進するのに一役買っていますね」(鳥井氏)

 学習の機会を取って集中するために「合宿」も行った。当初は週に1度、時間を決めて講習する形を考えていたが、時間が合わない可能性を考え、集中して学べる一泊二日の合宿形式にしたという。

 合宿にはさまざまな効果があった。まず、会社から隔離されるので、各メンバーが「腹をくくる」。また寝食を共にし、午後1時から5時までの受講を繰り返すうちに顔見知りになりやすく、合宿終了後でも情報交換が活発に行われるようになった。別々の部署の人同士で質問し合うという関係性も生まれた。

SmartDB合宿
SmartDB合宿は、もともとスキルトランスファーの目的で開催された

 「合宿では、SmartDBをテーマにしていたけど、会社に戻ってからBIツールを使った開発をしたり、RPA開発をしたりする合宿卒業生もいる。DXのための開発をしたいという興味を持った同じようなレベルのメンバーたちが、同時期に集まることができて一体感が生まれ、お互いに情報を共有し合うようになった。そういう意味でも合宿は良かったのではないかと考えています」(横山氏)

デジタルの民主化のその次は?

 非デジタル部門からの受け入れや、集中して学ぶ合宿、随時開催する勉強会などにより、いわば「デジタルの民主化」を実現しつつあるKDDI。次の段階として、「三刀流」の構想があるという。どういうことか。

三刀流
コーポレートDX推進部部長が語った「三刀流」とは?

 石原氏はRPAを扱う部門にいるが、先述したSmartDB合宿に参加した。また、経理部門にいたときにはBIダッシュボードを使っていた。

 「コーポレートDX推進部部長が就任1年目に『チーム体制は三刀流で』と宣言してくれたおかげで、自分たちが得意とするツールだけでなく、それ以外のツールについても知ろうとする様子が、RPAチームでも見られるようになっています」(石原氏)

 課題を前にしたときに重要なのは、解決方法を特定のツールに限らないことだと横山氏も話す。

 「SmartDBのグループでも、なにか問題を解決しようとするときに、SmartDBで解決しようという“ツール脳”になっていることが多い。でも、重要なのはそのツールを使うことではなく、課題を解決すること。どのツールを使えば解決できるかなという思考が必要になってくる。

 課題解決のための案件を相談されたとき、自分のところに来てもらったからといって必ずしもBIツールだけで考える必要はない。隣のスペースにいるRPAチームや、さらにその隣のSmartDBなどと掛け合わせた方が、ユーザー部門にとって価値が高いこともある。ツールありきではなく、To Beから逆算できるそういうマインドセットが浸透しつつあるのが、デジタルの民主化のNEXT STAGEだといえるのではないでしょうか」(横山氏)

 最後に横山氏は次のような言葉で締めくくった。

 「KDDIがSmartDBを導入してからまだ2年半であり、試行錯誤の連続だった。でも、解決したい課題があれば、スキルは自ずとついてくる。みんなで触って議論して、楽しく学びながらDXしてもらいたい。そうやってデジタル人材は増えていくし、DX推進も成し遂げられると考えている」

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