自治体の生成AI活用術 DXのための具体的ステップとは?【プロンプト例あり】(3/3 ページ)
生成AIの利活用を自治体に効果的に定着させるためには「マネジメント視点での支援」と「テクノロジー視点での支援」の両輪をバランスよく推進することが不可欠だ。
「解決したい行政課題」を生成AIで明確にする方法
自治体の個別計画の構造は、WHY-WHAT-HOWの順番で詳細化されることが一般的です。
- WHY:なぜやるのか
- WHAT:WHYを受けて、何をするのか
- HOW:WHATを受けて、それをどうやってするのか
自治体のDX推進計画の中には、WHATやHOWなどの「やりたいこと」ばかりが列記されて、その手前にある「なぜやるのか」が明らかになってないものも散見されます。こういう計画の場合、絶対に失敗しないという前提で取り組んでいるので、いざ「やりたいこと」の目論見が外れると、軌道修正も方針転換もできません。
したがって、計画の中でWHYを定義し、関係者全員で合意しておく必要があります。この合意されたWHYのことを「ビジョン」といいます。
現在の計画の中にビジョンが示されているのならば、改めてその内容は確認しておきましょう。その際、ビジョンの形式は「私たちは◯◯において、◯◯が◯◯のようになっていたい」という「状態」であることが必要です。ここで「◯◯する」というように、やること(WHAT、HOW)が書かれていると、計画の遂行に支障をきたします。
ChatGPTでビジョンを明確化する
ChatGPTに現在のDX推進計画をドラッグ&ドロップして読み込ませます。その後、次のプロンプトにより、指示を出します。同じような作業を繰り返すのであれば、GPTsを使って専用のAIを作ってもよいでしょう。
# 指示
- アップロードしたファイルは、私たちの自治体のDX推進計画です。
- この計画の文面を参照して、私たちが2029年までに実現させたい「ビジョン」を抽出してください。
- 抽出する際は、次の「分類項目」に分類して、それぞれ抽出してください。同じ内容がそれぞれの分類項目に記載しても大丈夫です。
# 分類項目
- 市民のためのビジョン
- 市民にとってデジタル技術の恩恵を受けている状態を場面ごとに列記する。
- 職員のためのビジョン
- 自治体職員にとってデジタル技術の恩恵を受けている状態を場面ごとに列記する。
# 注意点
- 「ビジョン」は私たちが目指すべき「状態」を示したものです。取り組むべき事項を記載しないてください。
- したがって、ビジョンの語尾は常に「◯◯になっていたい」「〇〇できている状態」となります。
- 「分類項目」の主語は、「市民」「職員」のいずれかとなります。
- もし、分からないことや確認したいことがある場合は、質問してください。
ある自治体のDX推進計画を読み込ませて、整理させたのが次の画面です。
ビジョンは抽象度が高いほうが大勢の人の理解を得やすいので、この内容をもとに改めて関係者(職員、市民)に対して、ビジョンがふさわしいかの意見照会を行うようにすれば、最初のボタンの掛け違いを防ぐことができます。
次回は生成AIを使ったDX推進計画の見直しの続きと、生成AIによる画像生成における配慮について一緒に考えてみましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ChatGPTに重要な情報を送っても安全か? 自治体のネットワーク分離モデルから考える
自治体における生成AIの利活用、今回は「送信された情報の管理の問題」、つまり「ChatGPTに重要な情報を送信しても安全なのか?」という点について考えたい。
プロンプトの悩み不要 自治体で使うべき「ChatGPT Plus」の機能とは?
生成AIを業務に導入する自治体が増える一方で、依然として活用に二の足を踏む自治体も。何がハードルになっているのか。
5分の作業が船移動で半日仕事に……沖縄・竹富町が挑むDX 離島の不利性どう解消?
沖縄県竹富町は、島しょ自治体が抱える不便をテクノロジーで解消しようと、DXに注力している。これまでは、5分で終わる町職員の業務が、離島へのフェリー移動を伴う出張となれば半日かかることもあった。
東京都、生成AIをどう利用? 最大の効果は「時短」ではなく……
8月から文章生成AIの全局導入を始めた東京都は、生成AIのメリットについて「単純な業務時間の短縮効果にとどまらない」とする。導入から約3カ月。東京都が生成AI活用を通じて得た「時短効果」以上の手応えとは――。
生成AI、那覇市はどう活用? 職員も思いつかなかった、AIが提案したアイデアとは
2023年12月から生成AIを導入した沖縄・那覇市。利用シーンを6つのケースに絞り、文章のたたき台作成などに用いている。行政が生成AIなどの先端技術を使う意義とは――。

