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人的資本「とりあえず開示」では無意味……注意すべき“指標の設計ミス”とは?「人事データ開示」の極意(1/2 ページ)

有価証券報告書における人的資本開示の義務化をきっかけに、人事データの収集や開示に注力する企業が増加した。しかし「データは集めて開示した。指標も設定した。だが、この取り組みが本当に企業価値向上につながるのか分からない」という本音を抱える企業は少なくないだろう。

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 有価証券報告書における人的資本開示の義務化をきっかけに、人事データの収集や開示に注力する企業が増加した。しかし、以下のようなモヤモヤを抱える企業は少なくない。

指標は設定したが、それを達成することで企業価値向上につながるのだろうか

eラーニングの受講率は上がったが、それが事業にどのような成果をもたらすのか分からない

研修に力を入れており、研修時間や研修受講率を開示しているが、このままで良いのだろうか

 データは集めて開示した。指標も設定した。だが、この取り組みが本当に企業価値向上につながるのか分からない――これが、多くの企業の本音ではないだろうか。こうした企業では、人的資本経営の「設計」がうまくいっていないことが多い。今回は、人的資本経営を設計するポイントについて解説する。

指標の設計 まずすべきこと

 人的資本経営は、設計で全てが決まるといっても過言ではない。まず、企業として目指したい状態があり、それを実現するための経営戦略と人材戦略を設計する。人材戦略を設計する際に設定するいくつかの指標は以下のように整理することができる。ポイントは「アウトカム(施策によって獲得できる成果)」から逆算することだ。

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 中長期の目標設定が「研修時間○時間」というようなインプットに関する定量目標、もしくは「チャレンジする風土づくり」というような定性目標にとどまっていることも少なくない。こうした目標設定では、人的資本に投資しても事業成果にはつながりにくい。

 重要なのは、第一に「アウトカム」を定量目標として設計すること。そして、ロジックツリーを組み、アウトカムに影響する「アウトプット」「スループット」「インプット」を導き出していくのだ。

 冒頭で「研修に力を入れており、研修時間や研修受講率を開示しているが、このままで良いのだろうか……」という悩みを挙げた。ここでいう研修時間や研修受講率は、インプットやスループットに関する設定目標・開示情報だ。そこで終わらず、アウトプットやアウトカムに関する指標を設定することが望ましい。

 「企業価値向上につながるのか」「事業にどのような成果をもたらすのか分からない」といった悩みも同様で、アウトプットやアウトカムを設計できていないがゆえに生まれるものだ。経営層や投資家が最も関心を持っているのは、もちろん事業成果の向上であり、アウトカムである。そのため、インプットやスループットの指標だけを追っていてはゴールに乖離(かいり)が生まれる。

 人的資本経営は、第一にアウトカムの設計から着手すべきだが、アウトカムに絶対解は存在しない。内閣府より公表された「人的資本可視化指針」で示されているROICやROEの逆ツリー例など、参考にできる情報はあるが、最終的には各社が自社の独自性を考慮し、自ら設計しなければならない。

 筆者の所属するリンクアンドモチベーションは、人的資本の情報開示ガイドラインである「ISO 30414」の認証を、日本含むアジアで初めて取得している。当社では、「人的資本ROI」をアウトカム指標として設計し、その定量データを開示している。人的資本ROIは、ISO30414のガイドラインに準拠した指標であり、「調整後営業利益÷人的資本投資額」で算出している。

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リンクアンドモチベーション「Human Capital Report 2023」p.7より引用(参考リンク:PDF

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