時代に逆行してあえて「地方・築古・一戸建て」に着目 社会問題化する「空き家」活用ビジネスが今アツい(3/4 ページ)
社会問題と化しつつある空き家を活用するビジネスが好調だ。今回はその代表格であるカチタス社のビジネスモデルに迫る。
なぜ、マンションではなく戸建てなのか
この流れを後押ししたのが、冒頭でも触れた地方における空き家問題、すなわち中古住宅の売却ニーズの拡大と、安価な戸建て住宅を求める安定的ニーズの存在でした。都会では高層マンションを筆頭に集合住宅に対する購買ニーズが強いのですが、わが国の大半を占める地方においては依然として戸建て住宅への購買ニーズが強い傾向にあります。しかも日本人の特性として、新築ニーズが特に強いのです。
そのため、中古住宅の売りはたくさんあるが人気がない、一方で新築物件は人気があるが価格的に高価であり手が出ない――このニーズのミスマッチ解消を可能にしたのが、新生カチタスのビジネスモデルなのです。
さらに力を発揮したのが、独自ノウハウが詰まっているカチタスのリフォームです。一例を挙げれば、躯体を強化し内装の今風リニューアルを施すのはもとより、万全のシロアリの駆除・予防を施し、隣接地と調整して駐車場まで確保して販売しています。特筆すべきは、リフォームの計画とその進展状況をWeb上で公開していることです。その進行過程をパソコンやスマホで見られ、リフォーム中に物件は販売されているので、着工早期に売買契約すれば壁紙や什器などの色の好みも反映できるのです。
ここまでかゆいところに手が届いて、大半の物件価格は新築住宅の半額程度だといいます。まさしく「価値を足して再生する」、カチタスという社名の面目躍如といったところでしょう。税金対策で長らく空き家になったままの住宅も多く、そのままでは住めない物件をプロのノウハウでよみがえらせ、安価にキレイで住みやすい戸建て住宅を求めるニーズに応える、カチタスの物件からはそんな姿勢がうかがい知れるのです。
素人考えでは、中古戸建て住宅よりもマンション・リフォームの方が手っ取り早く、手掛けやすいのではないかと思えてしまうかもしれません。しかし、カチタスは原則マンション・リフォームには手を出していません。その理由を新井社長は、「当社の営業中心地域は人口5万人ほどの都市で、そこにはマンションが少ない。またマンション・リフォームはリスクが少ないために、参入障壁が低く競争上から粗利が小さい」と説明しています。
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