時代に逆行してあえて「地方・築古・一戸建て」に着目 社会問題化する「空き家」活用ビジネスが今アツい(4/4 ページ)
社会問題と化しつつある空き家を活用するビジネスが好調だ。今回はその代表格であるカチタス社のビジネスモデルに迫る。
あえて時代の逆「地方・築古・一戸建て」にこだわる
そしてもう一つ、中古戸建て住宅にこだわる大きな理由があります。「世のためになるかどうか、ということを大切にしている」と新井社長は話しており、自らが「日本の空き家問題を解決する」という社会課題へ正面から取り組むという自社の社会的存在意義を社内で共有しつつ、日々ビジネスに取り組んでいるのです。この姿勢こそが、独自のビジネスモデル成功の大きな原動力になっていると感じます。
住宅流通が「都市・築浅・マンション」に集中する時代に、あくまで「地方・築古・一戸建て」にこだわり続けるカチタス。その姿勢に共鳴をしたのが家具・インテリア製造販売大手のニトリでした。ニトリは2017年、発行株式の34%相当を取得しカチタスと資本・業務提携を結びました。
これによりカチタスはニトリ・ホールディングスの持ち分法適用会社となり、提携により内装リフォームなどに一層の磨きがかかる、鬼に金棒状態になったといえます。そして同年、念願の東証一部(現プライム)への上場を果たしました。上場以降はコロナ禍がありながら、実質7年連続で増収増益を続けています(2023年度のみ、対税務当局訴訟関連支出という特殊事情により約10%の減益)。
一見古くさく思える中古住宅の再生は、その実サステナブルであり、時代の要請にも合致したアップトゥデイトなビジネスといえるでしょう。社会課題に正面から取り組みつつ他社の追随を許さぬ現状からは、自社そのものをリフォームして価値を足したともいえるカチタス。そのサステナブルなビジネスモデルは、不動産販売業界の価値をも足していく存在なのかもしれません。
著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
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