LINEヤフー動画事業の27歳エース社員 「アプリDL数」前年同期比3倍を実現、その手腕は?:教えて!あの企業の20代エース社員(2/2 ページ)
新卒から5年間、LINEヤフーの動画事業で奔走してきた27歳エース社員がいる。現在はLINE VOOMに携わっているが、新卒配属されたGYAO!では、新規アプリDL数を前年同期比で3倍にした。エース社員の手腕を取材した。
LINE VOOMに異動 業務も180度変わった
GYAO!での約1年半の経験を経て、木藤さんは新たなチャレンジに乗り出すことに。2021年3月にLINE VOOMに異動した。
LINE VOOMは、ショート動画を中心とした動画プラットフォームで、2021年11月から提供している。しかし、すでにTikTokを筆頭にYouTubeやインスタグラムなどがショート動画市場で多くのシェアを持っており、かなり出遅れたスタートだと言わざるを得ない状況だった。
「縦型ショート動画は、すでにかなり盛り上がっていました。まだまだやれることはあるのではないかと思いつつ、他のサービスが強いのでどうシェアを取っていくのか、悩んでいました。チームとしては、縦型ショート動画のコンテンツ数を増やしていくという大目標があり、それを達成するためにプロジェクトが複数動いていました」
木藤さんが取り組んだプロジェクトは2つ。まずはLINE VOOMにユーザーが投稿したくなるようなエフェクトやステッカー機能のリリースに向けて動き出した。10〜20代のユーザーが投稿したくなるような機能を、韓国にある開発チームともディスカッションしながら探っていった。
【訂正:2024年10月11日午前10時41分 初出で「韓国のネイバーと」と記載しておりましたが、「韓国にある開発チームとも」に訂正いたします。】
「韓国の流行りが日本に入ってくることはよくあります。ただ、韓国での当たり前が日本では異なることもあります。例えば、韓国では配信者の顔出しは一般的ですが、日本では苦手意識を持っている方もいます。韓国の配信の流行りを取り入れつつ、日本のユーザーが使いやすいような機能、というバランスは意識していました」
エフェクトの利用数ではまだまだ目指す地点に到達できていないが、両国の良い点を取り入れたエフェクトの利用数が相対的に多いという結果は得られているという。
もう一つ取り組んでいたプロジェクトは「クリエイター育成プログラム」だ。縦型ショート動画プラットフォームには、TikTokerやインスタグラマーなどプラットフォームの代表的なクリエイターが存在するのに対し、LINE VOOMではまだスタークリエイターがいなかった。そこで、スタークリエイターの育成と輩出を目的にプロジェクトが始動した。
「50人程度のクリエイターを対象に、投稿内容へのフィードバックや週1での面談などを実施していました。投稿内容と数字の動きを見て、今後どんなコンテンツを投稿していくのがいいか話し合います。毎日投稿するためにモチベーションが上がるようなコミュニケーションを取るなど、かなり密着型で取り組んでいました」
プログラムから巣立ち、LINE VOOM内で人気を集めているクリエイターも出てきているという。その後、育成から収益化に軸足を移したプログラムを展開。収益化プログラムには現在までで延べ1万人以上が参加している。
縦型動画市場は今後も激しい競争を強いられるだろう。調査によると、2023年の縦型動画広告の需要は高まっており、市場規模は昨年対比156.3%の526億円に到達した。2024年は773億円、2027年には1942億円に達する試算が出ている。
生活者の日常における縦型ショート動画の視聴時間が年々増加する可能性を踏まえた上で、現在LINE VOOMが抱えている課題と改善していくべき点をどう見ているのか。
「LINE VOOMは国内に注力したサービスですので、どうしてもグローバルで展開しているサービスよりもコンテンツ数が少なくなってしまいます。コンテンツ数が少ないことは、より良い視聴体験に生かす要素が少ないことを意味するので、その点は課題だと考えています。一方で、LINEというプラットフォーム内で展開しているサービスだからこそ生まれるユーザー同士のコミュニケーションがあるので、そういった人とのつながりという強みは持っていると思います」
生活者のコミュニケーションツールとして圧倒的な地位を確立しているLINEだが、LINE VOOMは使用していないというユーザーは多い。LINEを生かしたLINE VOOMの活性化について、木藤さんは「個人の考え」と断った上で、以下のような構想を話した。
「LINEというプラットフォームを通じて気軽に投稿者になれる工夫ができればいいなと思っています。例えば、LINEのグループトーク内に思い出の動画を上げることは日常的だと思うのですが、それをLINE VOOMという場所に投稿するのは大きな壁がありますよね。動画を上げるという行為自体は同じですが、視聴対象が異なるため大ごとに感じる。そこの負担を取り払えて、発信に対してモチベーションが高まるようなサポートにもっと取り組んでいきたいです」
木藤さんは新卒から5年間、一貫して動画事業に関わってきた。変化が大きく、あまたの正解がある業界で、成果を出し続けるには不断な努力が必要だ。特に、LINE VOOMは業界の中では後発で、国内特化サービスという点でもハンデを負っている。
動画プラットフォーム市場で番狂わせを起こせるか。「まだまだやれることはある」という木藤さんの発言が正解になる日が待ち遠しい。
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