オフィスなの? 飲食店なの? デスクで働く社員が丸見えの「社食堂」が誕生した背景(2/4 ページ)
広島と東京に拠点を置く建築設計事務所が、オフィスにある食堂を一般開放している。ただの食堂ではなく、その空間にはオフィスも共存している、特殊なスペースとなっている。どんな狙いや効果があったのか取材した。
どんなメリットが生まれたのか
東京オフィスは全体を見渡せるオープンキッチンが中心にあり、道路に面した入り口側が一般向けスペース、奥の半分が社員スペースだが、壁や目隠しがあるわけではない。こうした空間設計には、どういったメリットがあるのだろうか。
「社食堂はオフィスであり、食堂であり、ライブラリーでもあります。つまり、その時々で何をするかで、場所の名前が柔軟に変わる設計です。空間をあえて混ぜることで、社員が1人で黙々と仕事をしていたときには生まれなかった雑談やコミュニケーションが生まれるようになりました。新たな発想を生むことにもつながるため、設計者にはそうした雑談が大事なのです。
また、飲食スペースが混んでいるときには『この席を譲ってあげよう』と気遣いも生まれます。1人でこもって設計していては、そうしたことに気づけない人になってしまいますから」(同)
日本の大手企業では昨今、フリーアドレスが当たり前に見られるようになった。こうした取り組みは社員同士の意外な接点や雑談を生み出すことを目的としている。特に創造性を求められる設計者は、なおさらこもってばかりではいけない、ということなのだろう。
メリットの一方で、プライバシー面などデメリットはないのだろうか。
「当初は守秘義務を懸念する意見もありました。そうした課題は壁をつくるのではなく『距離』で解決しています。具体的には、機密事項などを扱う際は一番奥の静かなスペースを活用しています」(同)
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