ハンコをつくっているシヤチハタが、なぜ“尿ハネに出会える”商品を開発したのか:インタビュー劇場(不定期公演)(2/5 ページ)
ハンコやインキなどをつくっているシヤチハタが、ちょっと変わったモノをテスト販売している。トイレの尿ハネを浮き彫りにするスプレーだ。なぜ「畑違い」ともいえる商品を開発したのかというと……。
開発のきっかけ
土肥: ドラッグストアでトイレの消臭コーナーに行くと、「ファブリーズ」や「消臭力」などが並んでいますが、近い将来「ミエルモ」が置いているかもしれません。使い方を見ると「トイレに吹きかけるだけで尿ハネ汚れが青く浮き出て、拭き取り掃除ができる」などと書かれているわけですが、消費者は社名を見てびっくりするのではないでしょうか。
「シヤチハタ? あのハンコをつくっているシヤチハタなの? なぜ、こんなモノをつくったの?」と。そもそも、なぜ畑違いのような商品を開発したのでしょうか?
南田: 私は研究開発の部署に所属していて、普段はインキやゴムなどを担当しているんですよね。広い意味で「印(しるし)」の価値を考えたときに、見えないもの・見えにくいものを見えるようにするにはどうすればいいのか。こうしたことを考えているのですが、具体的にどうすればいいのか。抽象的なことばかり考えていて、どのような価値を提供すればいいのかよく分からなかったんですよね。
そうした日々を送っている中で、同僚がこのようなことを言っていました。「トイレを掃除したはずなのに、なぜか臭う」と。この話を聞いたとき、尿ハネが見えるようになれば、臭いの元になる部分をしっかり取り除けるのではないか。いろいろ調べていくと、同じような悩みを感じている人が多いことも分かってきました。であれば「シヤチハタのインキの技術を使って、臭いの元が見えるかもしれない」と考え、開発がスタートしました。
土肥: インキの技術を使えば、臭いの元が見えるかも……という意味がよく分からなかったですが、その前に質問がひとつ。「尿ハネが見えるようになる商品を開発するぞー!」と社内でアピールして、どのような反応があったのでしょうか? というのも、シヤチハタは文具メーカーですよね。開発を目指している商品は、本業とはかなり遠い位置に存在するモノと感じましたので。
南田: 大きく分けて「2つ」ありました。1つは「好意的」な声です。当社はハンコやインキなどをつくってきたわけですが、これまでの延長で商品をつくり続けても、明るい未来が待っているとは限りません。言われたことばかりをやっていればいいという時代でもないので、異分野に挑戦することに対して、好意的な意見がありました。
もう1つは「否定的」な声でした。尿ハネが見えるというアイデアは「おもしろい」というコメントが多かったのですが、その一方で「汚れはあまり見たくない」という意見もありました。
土肥: ハンコやインキなどをつくっている会社なので「尿ハネが見えるような技術を開発するのは難しい」という意見はなかったのでしょうか?
南田: それはなかったですね(きっぱり)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
「ポン!」の音が消えた 脱ハンコが広がって、シヤチハタはどんな手を打ったのか
「脱ハンコ」の動きが広まっているが、大手ハンコメーカーのシヤチハタはどのように対応しているのだろうか。時代の流れに取り残されているのでは? と思いきや、自社の技術を生かして「B2C」でヒット商品を連発していたのだ。担当者に開発の秘話を聞いたところ……。


