なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方:ずさんなガバナンス(1/6 ページ)
半導体大手のキオクシアHDが、株式上場を遅らせると発表しました。キオクシアの旧社名は「東芝メモリ」。「金の卵」ともいえる事業を、なぜ東芝は手放したのでしょうか。
著者プロフィール:
カタリスト投資顧問株式会社 取締役共同社長/ポートフォリオ・マネージャー
草刈 貴弘
大学卒業後、舞台役者などを経て2007年にSBIリアルマーケティングに入社。2008年にさわかみ投信に転じ、顧客対応部門、バックオフィスの責任者、アナリスト、ファンドマネージャーを経験し、2013年に最高投資責任者、運用調査部長、2015年取締役最高投資責任者に就任。2023年3月に現職のカタリスト投資顧問に入社し、同年6月に取締役共同社長に就任。
投資先企業の企業価値向上に直接寄与することで、日本企業の成長と資本市場の活性化と、個人投資家の財産づくりを両立することを志向する。ファンダメンタル分析を基にしたバリュー投資を軸に、持続的成長の転換点を探るのをモットーとする。現在、朝日インテック社外取締役。東洋大学理工学部卒。
半導体大手のキオクシアホールディングス(以下キオクシア、東京都港区)が、早ければ2024年10月を目指していた東京証券取引所への上場を遅らせる方針を固めました。キオクシアの旧社名は「東芝メモリ」。債務超過に陥った東芝が、2018年に米投資ファンドのベインキャピタル率いる日米韓連合に売却したものです。
東芝の半導体事業は、不正会計が発覚した当時、日本で唯一トップクラスの技術力を誇り、その後の日本経済の成長にも大きく寄与しうる「金の卵」でした。私は、それを売却することは理解に苦しみましたし、世間的にも「なぜ売ったのか」という声が上がっていました。
東芝はどこで道を間違え、そのような重要産業を手放すという決断をしてしまったのか。今回は当時の東芝の財務状況やガバナンスを振り返りつつ、今後日本の企業に求められる経営は何なのか探りたいと思います。
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