どのシステムで、何するんだっけ? “SaaS多すぎ問題”を解決に導く「DAP」とは:【連載】日本企業のDXには「DAP」が欠けていた(2/3 ページ)
多くの企業で、SaaSがあふれています。「どのシステムで、何するんだっけ?」とシステム迷子になる社員も出てきてしまうでしょう。
事業部門の利用者視点の課題
あらゆる業務がシステムを使って進められる環境では、利用者は以下のような課題に直面します。
多くの企業で活用が進むSaaSは、活用するシステム(サービス)数が多くなりがちで、また頻繁な入れ替えが起きる傾向にあります。米Productivの2023年の調査によると、大企業が利用しているSaaSは1社当たり平均で473に上り、また年々増えてきています。
「この業務のために利用すべきシステムはどれか」、さらには「どう使えば良いか」まで全てのユーザーが正しく理解しているという状態の実現はほぼ不可能です。
システムを利用する目的は本来「システムを使いたいから」ではなく「業務を完遂したいから」であるはずですが、複数のシステムにまたがる業務においては、シームレスな連携が困難な場合もあります。例えば、あるシステムから他のシステムに遷移し、作業を行った後に元のシステムに戻ったり、その際にデータのコピー&ペーストが発生したり……と、効率化しきれないことがあります。
そもそも企業内の業務は、全てをSaaS利用で片付けられるわけではなく、モバイルなど他の端末で行う場合もあります。社内UXの対象が広がる中で、設計された業務プロセスをきちんとこなしていくのは一筋縄ではいきません。
つまり利用者にとっては「SaaSだけではなく、デスクトップやモバイルを含むデジタルUX全体に広がった範囲で」「単にシステムを操作するというレベルではなく、業務を完遂する際に困難に直面する」という課題が生じています。
事業部門のマネジメントクラス視点の課題
DX、生産性向上プロジェクト、特定の業務のプロセス改革──みなさんの勤務先でも、さまざまな部門で「改革」を掲げるプロジェクトが立ち上げられているのではないでしょうか。
特に事業部門における「プロジェクト」は変革を念頭に置き、ビジネス環境の変化に合わせて一連の業務を新たに導入したり、すでにある業務の定義を見直したりすることを目的として、その過程で、現場のメンバーが行っている日常業務における意思決定や振る舞いが変わることを指すべきでしょう。
その際、事業部門のマネジメントクラスの方々にとっては何が課題でしょうか。例えば以下のようなものがあります。
- 変革を掲げたものの、変革の意図が現場のメンバーに伝わらず、そもそもやる気になってもらえない
- 実際に現場のメンバーに実行してほしいタイミングがあっても、「やり方が分からない」と対応してくれない
- やる気はあるが間違ったアクションが発生してしまい、意図通り動いてもらえない
- 当初は「変革を通してデータを収集し、データドリブンな意思決定を行えるビジネスの基盤を手に入れたい」などの意図があったが、達成できない
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