大手SIer(システムインテグレーター)の都築電気は、2023年に発表した中期経営計画「Transformation 2026」で、10年後の目指す姿として顧客の成長を先導するパートナー「Growth Navigator」を掲げている。その実現に向けて強力なタッグを組むのが、グループ会社のコムデザインだ。クラウド型CTI「CT-e1/SaaS」を提供するコムデザインは、SaaSの価値を最大限に発揮して顧客起点のサービスを提供する新しいサービスモデル「CXaaS」(Customer eXperience as a Service:シーザース)を提唱している。
CXaaSの考え方は、企業にどのようなメリットをもたらすのか。SaaSベンダーとSIerという立場が異なる両社が感じるCXaaSの魅力とは何か。都築電気のコミュニケーション領域を担うボイスクラウドビジネス統括部の平林謙太郎氏(クラウドコミュニケーションビジネス推進部 副部長 兼 セールスエンジニアチームマネージャー)と、コムデザインの寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)に話を聞いた。
(左から)都築電気 平林謙太郎氏(ボイスクラウドビジネス統括部 クラウドコミュニケーションビジネス推進部 副部長 兼 セールスエンジニアチームマネージャー)、コムデザイン 寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)
CXaaSはエンジニア出身社長の戦略だった
――コムデザインの事業内容およびCXaaSの考え方について教えてください。
寺尾氏: コムデザインは、CT-e1/SaaSを2008年から提供しています。私たちが提唱するCXaaSは、サブスクリプション型の定額利用料でソフトウェアを提供して、技術的なパートナーのFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)が運用を支援するというサービスモデルです。
CXaaSの概念は、コムデザインの創業者で代表取締役社長の寺尾憲二がCT-e1/SaaSを開発して市場へ展開する過程で生み出しました。エンジニアとして働いていた創業者は、CT-e1/SaaSを自ら開発してセールスする際に「プロダクトは作れるが、お客さまとの価格交渉や折衝が得意ではない」という課題を抱えていました。2008年当時はクラウドサービスの認知度も低く、大手ベンダーが市場を独占していたため販売に苦戦していたのです。
お客さまにCT-e1/SaaSを知ってもらい、使ってもらうための戦略として考えたのが「お客さまのニーズを聞いて、エンジニアとして培った技術力で実現する。それを、追加費用を頂かずに実現してCT-e1/SaaSを使い続けてもらう」でした。それが私たちの経験となり成長につながると判断したのです。
これは今のCXaaSにつながる考え方です。コールセンター向けシステムはもちろん、他の領域のクラウドサービスにも応用できる汎用(はんよう)性がある点が特徴です。
平林氏: コムデザインはお客さまに提供する最大の価値として「いい人」を掲げ、「Good People Charter」という行動指針を定めています。都築電気から見て、CXaaSはその感覚があるからこそ生み出せたサービスだと感じています。
――“いい人”として顧客ニーズに対応し続けるには、FAEが重要なポジションになりますね。
寺尾氏: FAEはお客さまのフロントに立つ大事な役割を担います。もちろんお客さまにとって“いい人”であるべきですが、使われるだけの存在になってはいけません。会社にとっても“いい人”であるべきです。
「何でもやりまっせ」というCXaaSのサービスを成り立たせるには、バランス感覚が重要です。会社の限られたリソースをどう使うか、開発の手順をどう設計するか、FAEには俯瞰(ふかん)的に考えて判断する力が求められます。
CXaaSの実装が企業にもたらす3つのメリット
――CXaaSの実装で、サービス提供者はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
寺尾氏: 3つのメリットがあると考えています。「営業工数の短縮」「マーケティング工数の削減」「従業員の育成」です。
アフターフォローに重きを置くCXaaSの考え方だと、営業担当者は「取りあえず使ってみてください。導入後にご要望があれば利用料金内でカスタマイズ可能です」という切り口でお客さまに提案できます。そのためカスタマイズオプションの追加提案や多様なプランを盛り込んだ見積もりの作成が不要です。提案から発注までの工数を削減できるため、営業担当者の負担軽減につながります。
お客さまの要望に合わせてプロダクトをカスタマイズし続ければ、市場調査などに力を入れなくても幅広いニーズに対応したものにバージョンアップできます。マーケティング領域に投資する費用の削減につながり、エンジニアリングだけでプロダクトを推進させる力が身に付くでしょう。
カスタマイズを繰り返せば、営業担当者はもちろんプロダクトを開発するFAEや開発エンジニアにナレッジが蓄積されます。CXaaSのサイクルを回すうちにスキルが向上して作業効率も上がり、組織の成長につながるはずです。
多様なニーズに応えるCXaaSの魅力とは
――都築電気のボイスクラウドビジネス統括部は、コムデザインとの連携を強化してCXaaSの概念を積極的に取り入れていますね。都築電気はCXaaSをどのように捉えていますか。
平林氏: CXaaSの考え方は、SIerがこれまで実施してきた受託開発型のビジネスモデルのメリットを捉えており、プロダクト開発の観点で重要であると考えています。
SaaSの普及やオンプレミスシステムからクラウドインフラへの移行など、お客さまのITニーズは多様化しています。そのニーズに応えるには、SIerとしての実績を生かしつつSaaSをはじめとしたプロダクト起点のビジネスにも注力する必要があります。都築電気は、CXaaSでカバーできないSI的な領域の支援と併せてCXaaSの考え方を適用したプロダクト面の選択肢を提供できる組織を目指しています。
当社がCXaaSの概念を応用してお客さまのニーズに応えるには、さまざまなメーカーやベンダーとの連携が不可欠です。取引先に「都築電気と仕事をすると新しい開発の方向性やアイデアがもらえる」「チャンスを得られる」というメリットを感じてもらいたいと考えています。当社が長年培ってきた経験は、お客さまと取引先に新たな価値を提供する源泉です。
その上で都築電気は、コンタクトセンターソリューション全体の課題を解決するFAEの育成に注力しています。セールスエンジニアチームを2023年度に発足して、営業と技術の間に立つプリセールスとしての役割を担っています。FAEは個人の力量に左右されてしまう部分があります。そこをチームで対応して組織力でどう解決できるかを意識しながら、バックヤードシステムや業務フローなどお客さまの多様な課題と向き合っています。
コムデザインに在籍するFAEは、CT-e1/SaaSをCXaaSの概念を取り入れて提供する役割を担っています。都築電気のセールスエンジニアチームは、コンタクトセンターソリューション全体を管轄しています。コムデザインが対応していない領域を都築電気が引き受けるなど、両社の強みを生かした連携を図っています。
CXaaSが描く未来とは
――CXaaSの概念が普及することで、ビジネス環境はどう変化するのでしょうか。両社が描くビジョンをお聞かせください。
平林氏: セールスエンジニアチームは、都築電気の祖業である“音声”に軸足を置きつつ、ある程度自由に動ける体制を維持してお客さまの課題に対応できる環境づくりに取り組んでいます。コンタクトセンターのフロントアプリケーションはもちろん、分析や運用改善に向けたフローの構築など、バックヤードの課題も解決できるスキル習得を意識しています。
お客さまはもちろん、メーカーやベンダーなど都築電気に関わる全ての企業のGrowth Navigatorになるには、取り扱う商材の幅を広げて存在感を発揮することが重要です。オンプレミスかクラウドか、アジャイル型かウオーターフォール型かにかかわらず、当社のセールスエンジニアチームがプロダクトの特性を把握してお客さまのニーズに応じた提案ができれば「Win-Win-Win」の関係を築けるはずです。
近年のコンタクトセンター領域は、CTI、AI、CRMをセットにした複合的な提案が求められています。お客さまの要望や課題は時勢に沿って変化するため、課題を理解して、どのソリューションでどう解決するか、さまざまな提案ができる組織づくりを推進します。
寺尾氏: SaaSの普及によって、多くの企業がITの恩恵を受けやすくなりました。しかし、システム導入が本当のゴールではありません。やりたいことを実現するには何が必要なのかを考えて、変化し続けることが重要です。コムデザインのFAEは、お客さまの側に立ってそのお手伝いをするスキルを持っています。都築電気のようにSI的な領域の支援とCXaaSの考え方を適用したプロダクトの提供という幅広い選択肢をお客さまに提示できれば、複数のサービスやツールを一気通貫でサポートできます。
お客さまは、業務に関わるさまざまな分野で複数のサービスを組み合わせてDXを加速させたいと考えているはずです。コムデザインと都築電気の取り組みを通してCXaaSの考え方が多くの分野に広がれば、日本企業の競争力を高めるきっかけになると確信しています。
――ありがとうございました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
アジャイル発想は顧客のビジネスをどう変える? 都築電気が問い続けるこれからのSIerの姿
ローコード/ノーコードは完璧とは言えない? IT人材不足でも自社に適したシステムを構築するために必要なこと
まだデジタル化に悩んでいるの? 多くの企業が陥りがちな“手段の目的化”から脱却するノウハウを専門家に聞く
関連リンク
提供:都築電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年12月17日




