28歳の「社長までの道」 5回も事業計画書を出し直し、手に入れた「仮合格」:教えて!あの企業の20代エース社員(2/2 ページ)
新卒3年目に社内の「社長公募制度」に申し込み、事業計画書を5回も出し直し、事業化を勝ち取った。通常の3倍の期間かかったが、諦めずにカンパニー設立を実現した28歳社長に話を聞いた。
5回の再提出に、条件付きの「仮合格」 続く挑戦のゆくえは
2回目の挑戦に向けては、役員にアドバイスをもらったり、既存のカンパニー社長に相談したりした。幼少期から海外志向が強かった自身の思いとフィードバックを踏まえ、事業案に改善を加えていった。
「メンバーズとして価値が出せる、かつ収益が期待できる事業内容であることは重視しました。最初に見られるポイントなので。そこから提供するサービスの具体性やPLなどの詳細を詰めていきました」
役員に壁打ち相手になってもらい、事業案はもちろん、細かい数字の整合性や経営陣へのプレゼンについても教えを請うた。結果、現在のグローバルミングルカンパニーの原型が誕生した。海外向けECサイトの運営という越境ECに関する事業案だ。
満を持して事業計画書を提出したが、結果は再提出。
経営層はメンバーズの事業としてハマるという考えは持ちつつも、「継続性」と「既存カンパニーとの類似性」に懸念を示していた。すでにメンバーズ内には「国内向けECサイト専門カンパニー」が存在していたため、近藤さんの事業案は「それの海外版」としてみられた。既存カンパニー内に海外事業部として誕生させるのではなく、新たにカンパニーを設立する意味、つまり価値提供の部分を問われることになった。
「最終的には現在の形に落ち着きましたが、それまではコンサルの要素を入れたり、制作にも手を出したりとごちゃごちゃしていました。何度も出し直して、5回目でようやく仮合格をもらいましたが、すごく時間がかかりました」
最終合格の条件である3件のリードを獲得し、最初の提案から約1年半後にようやくカンパニー設立を達成した。5回の出し直しに加え、リード獲得という条件を加えられたにもかかわらず、なぜ諦めずに挑戦できたのか。
「自分にがっかりすることはもちろんあります。地頭がよくないので行動力しかないんです。それを私から取ってしまったら『ただの人』なわけで。だから『あなたにはもうできませんよ』と言われるまではやり続けようと思って、諦めるとかは考えないようにしていました。考えていたら会社辞めていたと思います」
カンパニー設立から約半年。支援企業数は2024年9月時点で5社に上る。近藤さんはここまでの軌跡を「『困っているところにきてくれた』とお礼を言ってくださるクライアントさんもいらっしゃって、会社を立てて支援できていることが嬉しいことです」と振り返る。
カンパニーの存続可否は四半期ごとに審査で決定する。事業継続への課題として、近藤さんは「認知度」を挙げる。
「設立したばかりのカンパニーであることに加え、そもそもメンバーズが海外支援業をしているという認識を持っているお客さまも多くないです。今後も認知拡大には力を入れます。また、この海外マーケティング市場は10年プレイヤーの企業も多いので、その中でいかに戦っていくかも考えて、飛躍的な成長につなげていきたいです」
国内市場の縮小が自明の日本において、今後国外に目を向ける企業は増えていくだろう。経済産業省の発表(参照:PDF)によると、2019年の世界の越境EC市場規模は100兆円超と推計されており、2026年には600兆円超にまで拡大すると予測されている。
大きく波打つ市場に小舟で乗り出したグローバルミングルカンパニーと28歳の船長が、いつか多くの船員と大型船を手にし、海外進出を狙う日本企業を先頭で率いる日が来るのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
LINEヤフー動画事業の27歳エース社員 「アプリDL数」前年同期比3倍を実現、その手腕は?
新卒から5年間、LINEヤフーの動画事業で奔走してきた27歳エース社員がいる。現在はLINE VOOMに携わっているが、新卒配属されたGYAO!では、新規アプリDL数を前年同期比で3倍にした。エース社員の手腕を取材した。
日立の29歳エース社員が考える「製造業の未来」 タイ赴任で見えた、自身の役割とは
日立製作所のエース社員が、アジア各国の製造拠点が集まるタイに赴任。そこで感じた日本の製造業の未来とは──。
新卒2年目でMVP 楽天エース社員の「売上、営業とのコネも少なかった」中での奮闘記
楽天グループが提供するポイ活サービス「スーパーポイントスクリーン」の部署に初めて兼村さんが新卒としてが配属された。売り上げも営業とのコネクションも少ない中で、新しい広告ソリューションを考案し、新卒2年目でMVPを獲得する。楽天エース社員の奮闘記。
富士通の27歳エース社員、1年目で花形部署に異例のヘッドハント 信条は「3カ月で成果出す」
新卒1年目で富士通のグループ会社に入社した寺島さん。まさかの1カ月で異動希望を提出し、現在は本社の花形部署で働く。新卒4年目の現在までにどのような経験を積んできたのか、取材した。
人材大手の内定辞退し、カレー店運営ベンチャーに入社 COOの離職で一皮むけた26歳のキャリア
人材大手の内定を辞退し、アルバイトをしていたカレー店を運営するベンチャー企業に入社を決めた。当時を「不安だらけだった」と振り返る26歳女性の等身大のキャリアを取材した。

