「103万円の壁」を壊すための私案(2/4 ページ)
「年収103万円の壁」の見直しの論議は完全に政治パフォーマンスの世界だ。もし本当にどの給与レベルでも「働き控え」を抑制したいなら、国民民主党が主張する策の真逆を行くのが正解ではないか。
端的に言ってしまえば、一定以上の年収のある人は今まで通りで、それ以下の年収しかない人を対象に新たな税率体系を適用する、という具合に2系統の税率にするだけだ。
そして低年収の人に対する非課税枠は(国民民主党案とは全く逆に)今よりも思い切り切り下げて年間20万円程度にしてしまい、その一方で彼らに適用される最低税率も現在の5%から思い切り下げてしまうのだ。
すると何が起きるか。さすがに年収20万円以下になるように「働き控え」をする人は極端に少なくなるだろう。
問題は、(1)2つの税率体系のいずれを適用するかの境目の年収をいくらとするか、(2)低所得者向けの税率を幾つにするか、の「組合せ」の設計だ。これをうまくやれば低所得者は不満少なく「働き控え」もしない。税収もそれほど落ち込まずに済む。
例えば(1)2つの税率体系の境目の年収を今より少し上げて114万円とし(115万円以上の年収なら従来の税率体系を適用)、(2)最低税率を今よりぐんと下げて0.5%とすると、どうなるか。
年収100万円の人は従来なら税金を払っていなかったのが5000円払うことになる。確かにちょっと悔しいのかもしれないが、「これくらいなら仕方ない」と思ってもらえるのではないか。そしてもう少し働くことで手取りは確実に増える。すると「年収の壁」はなくなってしまうはずだ。
年収114万円の人は5700円払うことになる。それに対し年収115万円の人は従来の税率体系なので、115万円マイナス103万円の「12万円の課税所得」に対し最低税率5%の税金、すなわち6000円払うことになる。これでも従来より相当安くなるはずだ。
しかし課税対象者が格段に広くなる(これは税の精神からは理想的)ので、税収全体で見ると大して落ち込まない(どころか、もしかすると増える可能性すらある)。
もちろん、生活保護の対象者から(いくら安くとも)所得税を取り立てるのは避けたい。具体的には、世帯年収が156万円以下(つまり月収が最低生活費13万円以下)である場合は、(他の条件が揃えば)生活保護の対象となるので、所得税の対象からも除くのが社会通念上妥当だろう。
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