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「103万円の壁」を壊すための私案(3/4 ページ)

「年収103万円の壁」の見直しの論議は完全に政治パフォーマンスの世界だ。もし本当にどの給与レベルでも「働き控え」を抑制したいなら、国民民主党が主張する策の真逆を行くのが正解ではないか。

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 さて、実は世に問われている「年収103万円の壁」の議論は不十分である。というのは、国民民主党が指摘し与党がおたおたと対応しようとしている「年収103万円の壁」の話には、誤解と公的な抜け穴があるのだ。

 この「年収103万円の壁」が気になる世帯の大半は、旦那さんがサラリーマンまたは公務員で(こちらが「扶養者」)、その奥さん(配偶者本人)が第3号被保険者であってパートやアルバイトなどで家計の足しにしているというパターンである。

 配偶者本人の手取りは「年収103万円の壁」を超えることで却って減るような印象がある。しかし実際には課されるのは、103万円を超える超過分に対し税率5%が掛かるに過ぎないので手取りは着実に増えるのである。つまりここが議論のポイントではないのだ。

 議論のポイントは、第3号被保険者である配偶者の年収が103万円を超えると、扶養者が配偶者控除を受けられなくなるところにある。年収が103万円を超えないように「働き控え」が行われる理由は、単に本人が課税されるだけでなく、それに加え扶養者がこうした控除を受けられなくなって、世帯全体として手取りが減って損をすると考えられているからだ。

 しかし、たとえ配偶者本人の年収が103万円を超えても、実は『配偶者特別控除』という制度が昭和62年から導入されており、扶養者は最大38万円の控除を受けられる。今では配偶者本人の年収150万円までは、扶養者の年収が900万円以下ならば38万円満額の控除を受けられる(これが『150万円の壁』)。

注)学生の場合にはそうした救済措置的制度がないため、その扶養者である親にとっては「年収103万円の壁」は実質的な壁として存在する。それと扶養者の勤める企業によっては、独自の配偶者手当の支給基準を未だ残しているところがあり(「古き良き会社」といえよう)、この「年収103万円」に合わせているところもある。この場合は別のところに「壁」が存在するので注意が必要だ。

 つまり今でも大半のパート主婦は「年収103万円の壁」を気にする必要はない。単に『配偶者特別控除』という制度が知られていないだけなのだ。そのため心理的な「壁」として残っているというのが実情だ。

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